不動産一括査定サイトの仕組みは「あなたの個人情報と不動産情報を6社程度の不動産屋に転送する」というもの。
不動産一括査定サイトのデメリット
まずデメリットを知る
筆者は不動産会社を約10年間経営し、複数の不動産一括査定サイトを利用してきました。この記事では、そこから見えた「デメリットの大きさ」を解説します。

不動産売買はけっこう複雑なので、なかなか一言で説明できません。
不動産一括査定サイトは「原則、使わなくていいだろう」と思うものの、「こんなケースでは使った方がいい」というパターンもあります。
もくじを見て「自分のケースに近いな」と思うか所があったら、その部分を読んでみてください。
不動産屋としての体験に基づいた記事なので、参考になると思います。
不動産一括査定のデメリット
一見怪しいけど役に立つチャンネルです
不動産一括査定サイトを利用すると、複数業者に査定依頼ができて便利です。
しかしその反面、多くのデメリットがあるのも事実です。一括査定サイトはボランティア的な第三者ではなく、個人情報を転売するというビジネスですから、それに付随する問題が起きるのは当然です。
まず、代表的なデメリットを押さえておき、それでも利用すべきかどうか判断するのがベターです。
気になるのは「知らない会社に個人情報を送信」すること

不動産一括査定サイトは、上の図のようにシンプルな仕組みでお金を稼いでいます。
あなたが不動産一括査定サイトに入力すると、査定サイトから6社程度の不動産屋に情報が転送されます。
不動産屋は、情報1件あたり、おおよそ1万5000円~2万円くらいのお金を支払います。
つまり、あなたが不動産査定サイトに個人情報を入力すると、その情報が6社程度の不動産屋に送られ、各不動産屋が2万円弱のお金を支払うことになります。
2万円 × 6社 = 12万円の収入
そして、個人情報の保護は各不動産屋に任されます。
この点も一応、頭の片隅に置いておいた方がいいかなと思います。

最低限、最終画面で「怪しい業者は含まれてないか?」と確認しておいてください。
「上位の大手業者」は参加していない

不動産一括査定サイトには、以下のような超大手業者は登録しておらず、査定依頼をすることができません。
不動産仲介業者取扱高トップ10
1位 | 三井不動産リアルティグループ |
2位 | 東急リバブル |
3位 | 住友不動産販売 |
4位 | 三井住友トラスト不動産 |
5位 | 野村不動産ソリューションズ |
6位 | 三井住友トラスト不動産 |
7位 | 三菱UFJ不動産販売 |
8位 | みずほ不動産販売 |
9位 | オープンハウス |
10位 | 積水ハウス不動産グループ |
公益財団法人不動産流通推進センターの資料を基に作成
そこで、不動産一括査定サイトを利用すると、中小から中堅くらいまでの不動産屋に査定依頼をしているということになります。
それはそれで悪いことではありませんが、大手仲介業者の販売力を無視した不動産売却戦略になってしまう点には注意してください。
「査定額の信頼性」はかなり低い

こんな広告を見たことがあるかもしれません。

でも、理屈で考えたらおかしいですよね。
不動産の価格査定は「これなら売れる」という相場の価格を出すものです。本来は、仕事ができる不動産会社6社が査定書を出してくれたら、査定額は同じ価格帯に並ぶはずです。
超大手仲介業者が「うちなら高く売れます」というならまだ(少しだけ)わかりますが、無名の地元業者に「うちなら高く売れます」と言われても、信用できませんよね。
ただ、仲介をとりたい一心で、高い値段を出しているだけでしょう。
その証拠に、超大手の三井不動産リアルティ(三井のリハウス)は、「高く売れます」という訴求をやめました。
そうではなく「三井は正確な査定を出します」という、地味ですが、大事なポイントをメインに打ち出しています。
三井のリハウス|公式サイト
上記リンク先を見るとわかりますが、一切「高く売れます」とは書かれていません。
信頼性の低い不動産屋が「うちでは高く売れる」という根拠のない査定を出すのは、不動産一括査定サイトにお金を払っているのが理由です。
払ったお金を「取り返そう」として、ウソ査定書が作られる点に注意が必要です。
むしろ「正しい査定額」がわからなくなる

会社所有のマンションを売却する際、一括査定サイトをいくつか使って実験してみました。
その結果、査定額はみごとにバラバラでした。

築古の小さいマンションで売却事例も多いはずですが、それでも査定額がばらつく背景には、業者間による能力の差もありました。
今回のケースでは、一番能力の低そうな業者が一番高い値段をつけていました(同じマンションの別棟と間違えて査定)。
このように「査定額が高いからいい」ということは一切なく、また「どれが正しい査定額か」を判断するのも難しいのがデメリットといえます。
筆者が自社マンションを売却した時のレポートは、以下の記事で読めます。
-
-
関連記事不動産一括査定やってみた!自社保有マンションを実際に売って注意点も判明
この記事では、マンション売却成功のカギを握る不動産一括査定サイトを実際に使ってみて、どのサイトが優秀か確認しました。 自社保有マンションも1戸売却。「具体的にどうだったか?」も掲載しました。 どの不動 ...
続きを見る
登録しているのは「不動産業者の2%以下」

国土交通省が発表した、令和2年の宅建業者(不動産業者)登録数は125,638社でした。
それに対して、不動産一括査定サイトの登録業者数は、多くても2000社前後です。
つまり、不動産屋全体の2%弱しか登録しておらず、しかも超大手の仲介業者はまったく参加していません。
たしかに不動産一括査定サイトは「複数業者にコンタクトできて便利」ではあるのですが、不動産屋全体のごくごく一部にしか連絡できない点は、もっと知られてもいいと思います。
一括査定サイトを利用する場合は、その点を押さえておいてください。
「しつこい営業」は実際にあり得る

先ほども述べたとおり、筆者は自社マンションを売却する際に不動産一括査定サイトを利用しました。
「訪問査定」ではなく「机上査定」にチェックを入れておきましたが、査定書を出してくれた不動産屋すべて(4社中4社)が、まず電話をしてきて「お伺いしたい」と言ってきました。
デフォルトで営業電話はかかってきます。
たいていの業者は、お断りすればすぐに引き下がってくれます。しかし、中には本当にしつこい業者がいるのも事実です。

ただし、アポなしでいきなり玄関前まで来る業者もいます(体験談)。これはさすがに強めの対応が必要でしょう。
めったにないとは思いますが、最悪の場合は以下のツイートなどを参考に、警察に電話をすることを考えてみてもいいかもしれません。
警察の方が言うには不動産屋を名乗るしつこい営業は多いらしいです。
— たけもうち(旧 竹内元紀)kindleで無料マンガ公開中 (@motokitake) March 3, 2023
悪質だと感じたら躊躇せず通報して下さいとのことなので、私みたいに20~30分我慢すること無くしつこいとか思ったらすぐ通報するといいと思います。
【ケース別】不動産一括査定サイトの上手な利用方法

元不動産会社経営者の感覚としては、通常は一括査定サイトではなく信頼できる不動産屋(大手仲介業者を中心に)に査定依頼をするのがおすすめです。
ただし、大手仲介業者が苦手とするタイプの物件もあります。
そういった不動産を売却する場合は、一括査定サイトをうまく活用して、効率的に売却活動を行う必要があります。
「住み替え」の場合は大手仲介業者を利用すべき

住み替えの場合は、どうしても「手持ちの不動産を早く、確実に売却する」ことが前提になります。
そういった確実性が要求される売買では、一括査定サイトではなく、大手仲介業者を利用した方が有利です。
とくに住み替えの場合は、査定額の正確さに定評がある三井不動産リアルティ(三井のリハウス)がおすすめです。
三井のリハウス|公式サイト
おそらく業界内で唯一「正確な査定額」を打ち出し、一定期間内できっちりと売却する方針をうたっています。
これは、もともと三井が「中古不動産流通の正常化」をめざして中古物件に乗り出したことも影響しています。
宮沢りえを起用した三井のリハウスのCMには、そういったメッセージも込められていました。詳しくは以下の記事で解説しています。
-
-
関連記事リハウスとは? 三井不動産リアルティの特徴・評判・メリット・デメリット
「三井のリハウス」は、三井不動産リアルティの「ブランド」で「住み替えする」という意味があります。1980年代、宮沢りえを起用したCMで「リハウス=住み替え」を強く印象づけました。 三井はなぜ、このブラ ...
続きを見る
「できれば高く売りたい」場合の査定サイト活用法

一方で「時間はかかってもいいから、できれば高く売りたい」というケースもあります。

たとえば地方の海沿いの物件(オーシャンビュー物件)などは特別な価値がありますが、買いたい人の絶対数が少ないため、時間がかかる傾向があります。
そういう物件を、時間をかけて粘って売却するのは、大手仲介業者が苦手とするタイプの仕事です。
この場合は、不動産一括査定などを利用して、その地方に詳しい地場業者に相談した方がうまくいく可能性があります。

そのほかにも「価値を認めてくれる人がいるはず」「時間がかかっても価値をわかる人に買ってもらいたい」という場合は、そういった売却活動に適した査定サイトを利用するのがおすすめです。
あとで詳しく解説しますが、まずは地方に強いリガイドを試してみてください。
Re-Guide(リガイド)不動産査定
|公式サイト
ざっくりいうと、リガイドは不動産屋にやさしい営業方針なので、不動産屋としても時間をかけたり、ユーザーのニーズをくみ取りやすいというのが理由です。
「とりあえず値段が知りたい」場合は別のサイトがおすすめ

とりあえず値段を知りたいだけで売る気はない、というケースもあります。この場合、不動産一括査定サイトを利用すると、不動産屋としては非常に迷惑なので、ぜひやめてください。
ユーザーも、売る気がないのに営業をかけられてしまい、お互いにいいことがありません。
そこで、こういう場合は匿名のAI査定などで概算価格を出してもらうのがおすすめです。個人情報も不要なので、しつこい営業電話もありません。
特に、マンションであれば匿名のAI査定でも、ある程度正確な価格が出せます。
マンションナビ|公式サイト
上のマンションナビのサイトで、まずマンション名を入れてみてください。それだけでざっくりとした価格が表示されます。

ただし、実際に売り出すために正確な価格が知りたい場合は、以下のマンションナビ公式サイトから査定依頼を出すほうが確実です。
マンションナビ(査定依頼)
|公式サイト
一戸建ての場合は査定の作業が複雑になるため、まだまだAIで信頼性の高い査定額を出すことは難しいようです。
「親と同居」「子と同居」の場合の考え方
「親と同居したい」「子供と同居したい」という場合は、条件を切り分けて考える必要があります。
通常の住み替えのように手持ち不動産の売却資金で新居を購入する場合は、大手仲介業者を選ぶのが確実です。期間内にきっちりと売り切る能力があるからです。
筆者は、この場合も、確実性の高い三井不動産リアルティ(三井のリハウス)を推します。
三井のリハウス|公式サイト
そうではなくて、今住んでいる家に親・子供と同居するという場合は、不要になる不動産をじっくり売却しても問題ありません。
そのケースでは都市部なら大手仲介業者を選び、地方の売りにくい土地・建物の場合には地場業者に強いリガイドをおすすめします。
Re-Guide(リガイド)不動産査定|公式サイト
リガイドで対応業者がない地方部の場合は、かたっぱしから一括査定サイトを試してみるしかないと思います。
「相続した実家を売る」場合も注意が必要

相続で実家を売却する場合、物件が近ければいいのですが、遠い場合は不動産屋選びに注意が必要です。
一般的には不動産屋に鍵を預けておき、随時案内してもらう形になります。

大手仲介業者に依頼できればコンプライアンス的にしっかりしていますが、田舎だとそうもいかないので、対応業者はピンキリです。
まじめな業者に依頼できると、庭の掃除などもやってくれますし、たまに空気を入れ換えてくれたりもします。
雑な業者だと窓を開けっぱなしで帰ったり(筆者の管理物件で何度かやられました)、鍵を紛失するという問題業者もいました。
筆者がもし遠方(田舎)の実家を売却するなら、地元の知り合いに「おすすめの不動産屋ある?」と聞いて回ると思います。
そうやって「地元に詳しく仕事も手堅い」という業者を見つけることが第一歩になるでしょう。
たまーに「東京の不動産屋に沖縄の物件を売ってもらう」という無茶な対応をする人がいますが、それはやめておきましょう。東京の不動産屋に地方の物件の相場はわかりません。また、直接案内もできないので、存在意義がほぼないからです。
筆者おすすめの不動産一括査定サイトはリガイド

筆者は不動産業者として、イエイ、イエウール、リビンマッチ(旧スマイスター)、リガイド(Re:Guide)という4つの不動産一括査定サイトを利用していました。
しかし、アポなしでユーザーの家に突撃する同業者を見ていて「これと同類と思われたら困る」と感じ、ほとんどの不動産一括査定サイトをやめてしまいました。
唯一、最後まで利用したのがリガイドです。
リガイドは不動産屋への対応がやさしく、その分不動産屋はユーザーにやさしく対応できることが決め手でした。
Re-Guide(リガイド)不動産査定
|公式サイト
これは言っていいかどうかわかりませんが、リガイドは不動産屋への課金が安いのも特徴です。
その分、不動産屋は無理をしてお金を取り返しにいかなくてもいいですし、お客さんの話をじっくり聞ける余裕が生まれます。
筆者の経験では、他の不動産一括査定サイトは料金が横並びで高く、それを取り返そうと強引な営業をかける不動産屋を目の当たりにしてきました。
まとめ:不動産一括査定サイトは状況に応じてかしこく利用!

原則として、不動産一括査定サイトは「絶対利用すべきもの」とまではいえません。
通常は、大手仲介業者を利用すれば、それが一番効率的です。なかでも、筆者が推すのは三井不動産リアルティです。
なぜなら、正確な価格査定を出してもらえるからです。
三井のリハウス|公式サイト
確実な査定額を元に、しっかりとした売却活動を行うなら、まずまず三井で問題ないでしょう。
ただし、大手仲介業者は「田舎の売りにくい物件」などは苦手です。効率を度外視して、じっくりと腰を据えた売却活動をするのは、小さな業者のほうが得意です。
そこで、そういった「良心的な田舎の不動産屋」を探す場合は、良心的な運営をしている不動産一括査定サイトのリガイドを試してみてください。
リガイドは不動産屋への課金も安く、対応も良心的です。そこで、不動産屋としてもじっくりと良心的な営業活動を行うことができます。
Re-Guide(リガイド)不動産査定|公式サイト
それ以外に筆者が不動産屋として利用したことがある不動産一括査定サイトについて、かんたんにレビューをまとめておきます。
技術力がすごいイエウール
おそらく現在の一括査定サイト界でナンバーワンなのがイエウールです。実は後発で、先行していたイエイやスマイスター(現リビンマッチ)に対抗するために、筆者の経営していた不動産会社にも営業電話がかかってきました。
IT企業として非常に優秀なので、かなりの数の送客をしてもらった記憶があります。送客の質は悪くなく、ある程度「ちゃんと売る気がある」というお客さんにつないでもらえました。
そのため営業をガツガツやる系の不動産屋の目にとまってしまい、そういった会社が多数登録したあたりで、筆者は登録を解除してもらいました。
運営元の会社は、現在もIT企業として非常に優秀で、すごい技術力を感じます。
イエウール|公式サイト
リビンマッチ(旧スマイスター)は意外と田舎に強かった
リビンマッチは、筆者が初めて登録した時期にはあまり送客の質がよくなかった印象です。当時はポイントサイトなどで集客していたこともあり、売る気のないポイント目当ての客も混じっており、不動産屋としては苦労させられました。
しかし、なぜか長期間登録を続け、その間に送客の質が大幅に改善されました。その過程で、イエウールに似てくる…という現象も起きました。
長く登録を続けた理由は、意外と田舎の物件に強かった、ということがあげられます。筆者の商圏だった沖縄本島北部はバッチリ田舎ですが、リビンマッチは案外しっかりした案件を送客してくれたことが印象に残っています。
顧客の立場で考えるとごく普通の査定サイトですが、田舎の物件なら試してみる価値があると思います。
リビンマッチ|公式サイト
イエイは3か月ほどで契約を解除した記憶が……
イエイは一括査定サイトのパイオニアですが、不動産屋の立場ではかなり微妙でした。送客が少なく、質もよくなかったからです。
早々に契約を解除したので、あまり印象に残っていません。
イエイ|公式サイト
イエイは長い間利用していないので、現在は状況が異なっているかもしれません。