
ビジネスについて知識が深い堀江貴文(ホリエモン)さんや西村博之(ひろゆき)さんが、そろって「持ち家より賃貸がおトク」といいます。でも、それは間違いです。

実は、堀江さんやひろゆきさんたちは、この2つを同列に比べています。
問題は「家賃9万円とローン月額9万円でどちらがお得か」という、単純な比較ではありません。賃貸と持ち家の条件を揃え、データと数字に基づいて比較しないと答えを出すことはできません。
そこで、この記事ではひろゆきさん、ホリエモンさんの持論をデータで検証していきます。
堀江さんたちは真実を口にするより、今、世の中に受けることを言う方がお金になります。本が売れたりYouTubeのチャンネル登録者が増えるからです。なので、データ的に間違っていても、旬っぽくてかっこよく見えることを言うのかなと思います。
ホリエモンの持ち家vs賃貸議論の間違い

念のためホリエモンチャンネルや堀江さんの著書を見なおして、堀江さんが「賃貸の方が有利だ」と主張する根拠を再確認してみました。
そこでわかったのは、堀江さんが一切「数字の裏付け」を提示しておらず、「お金持ちの主観」で語っている事でした。
数字で読み解くと、堀江さんの勘違いが見えてきます。
そもそも堀江さんは「僕、不動産は詳しくない」と自分で言っていますよね。不動産意外のジャンルでは、堀江さんはすごいと思いますが、本人も言うとおり、不動産に関してはあまり参考になりません。
「賃貸は買うより安い」のは間違い
賃貸と持ち家の条件を揃えてしっかり計算すると、持ち家が有利という結論になります。
その理由もあきらかです。

賃貸物件の家賃には、大家さんの利益や、空室リスクに対応するコストなどが上乗せされているのが最大の理由です。
そのため、同じ広さ・クオリティの物件で比較すれば大家の利益とコストが乗せられている賃貸の家賃は必ず高くなります。
このテーマについて、詳しくは以下の記事でより細かく計算しています。
「賃貸と持ち家で1300万円の差」は本当なのか検証してみました|関連記事
「持ち家は資産にならない」のは間違い
堀江さんだけでなく、経営者や経済学者はよく「持ち家は資産にならない」といいます。しかし、そんなことはありません。
確かに今はバブル期のように、不動産価格が大幅に上昇することはありません。投資としての魅力は少なくなりつつあります。
しかし、それと「資産にならない」というのはぜんぜん違う話です。月額家賃が10万円の物件に20年住んだ場合と、月々10万円のローンで家を買って価格が半分に下落した場合の比較をしてみましょう。
仮に半額に暴落したとしてもおトク
家賃はどこまでいってもゼロ円しか残りませんが、持ち家であれば価格が下がっても20年先に残っている価値は1240万円です。
住みながら1240万円の貯金ができたようなものですから、むしろものすごく効率のいい資産形成ともいえます。
【ここでの計算】持ち家を買って、月々10万円のローンを金利0.8%で20年支払うとすると、購入できる物件価格(利息を除いた価格)は約2220万円です。20年後の減価償却分を差し引いて、約1240万円の価値が残るという計算です。
しかも現実は価格が上がっているさらにいうと、三大都市圏では不動産価格が上昇を続けています。特にマンションが値上がっています。
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これを見る限り、首都圏のマンションはふつうに資産になっていますし、資産価値が上がっています。

老後を考えた場合、少ない年金でやりくりするには持ち家の方が有利です。
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関連記事おひとりさまの老後の住まい方。40代・50代からやるべき事は?
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「賃貸は自由に住み替えられる」のは気のせい

堀江さんだけでなく、賃貸派の多くの人たちは「賃貸は自由に住み替えができるのがメリットだ」と考えています。
しかし、データを見ていくと「そもそも自由に住み替えをする必要があるのか?」という問題に気付きます。

この図は、5年移動率といって「ある調査時点から5年後に引っ越していた確率」を調査して、年代別にまとめたグラフです。
つまり、せっかく賃貸に住んでいるのに、年を取るごとに住み替えをしなくなるわけです。
そうすると、「自由に住み替えられる」メリットは若いうちだけ重要で、一定の年齢になると自由に住み替える必要がなくなると考えられます。
では、何歳くらいで住み替えのメリットが薄れるかというと、40歳前後だろうと推測できます。

なぜなら、40歳くらいから持ち家比率がグッと上がっていくからです(持ち家比率が50%を超える)。この年代になると「もう引っ越しの必要はない」と考え、多くの人が家を買っています。
そう考えると、若いうちは賃貸のメリットを生かしつつ、40歳前後で持ち家にシフトするのが合理的ともいえそうです。実際、30代から40代前半で家を買う人が多数派です。
国立社会保障・人口問題研究所の調査では、55~59歳の人の生涯引っ越し回数は平均4.07回。4回目の引っ越しで持ち家に住めばよいわけです。
京大の研究によると「引っ越しが多い人は幸福度が下がる」
京都大学の川端 祐一郎准教授(都市社会工学)がYouTubeの『表現者クライテリオン』公式チャンネルで「引っ越しが多い人は幸福度が下がる」という説明をしています。
特に子どもの頃に親の都合で「強いられた引っ越し」をした人は、その後の人生において、
- 大人になってからの幸福度が下がる
- 健康度が下がって、ある年齢での死亡率が上がる
- 大学での学業成績が下がる
といったことが、研究から明らかになっていると述べています。また、中国の研究によると「反社会的行為が増える」とされているそうです。
特に、子供の頃に、いわば強いられた引っ越しですよね。親の都合で引っ越しをさせられた人というのはその後平均的にあまり幸せでない人生を送っていることが多いらしいということがわかっている。
川端准教授
川端先生は「引っ越しが多いと、いいことがない」と述べています。
そういった研究成果やデータを見ずに「住み替えをする自由が……」という堀江さんやひろゆきさんには、あまり説得力がないと感じます。
ウソでしょ! と思った人は、ぜひ上の動画を見てみてください。1~2分見ただけで「なるほど」と納得できるはずです。
「オーナーが使わなくなった格安賃貸を狙え」は実行不可能
これは勝間和代さんがよく言うのですが「世の中には家を買ったけど事情によって住まなくなり、安く貸し出している物件があるから、そこに住めばおトク」という説があります。上記の動画内で、堀江さんも同意しています。
買ったはいいけど住んでいない住宅ってたくさんあるんですね。(中略)オーナーがぶん投げちゃった2割3割安い賃貸にするのはよっぽど(住居費が)下がりますよ。
堀江さんのYouTubeチャンネルより
この短いコメントの中に、3つの間違いがひそんでいます。
- そのような都合のいい物件は多くない
- 家賃は賃貸管理業者が大家に提案するため通常は適正価格である
- 仮に賃貸の平均より2~3割安くても持ち家より安いとは断定できない
たとえば、2022年4月時点で広告されている物件をいくつかの都市について調査したところ「賃貸に転用された分譲物件は、多くても1%いかない」ということがわかりました。
「オーナーがぶんなげちゃった物件がたくさんある」というのは間違いです。
また、運よく分譲用の物件が賃貸されていたとしても、分譲用物件は床面積が広いので、賃料もかなり高くなります。
こういう話を信じて「一生賃貸で」と決めてしまうのは、かなり危ないと感じます。
堀江さんはお金持ち視点
結論として堀江さんの「持ち家より賃貸が有利」説は、自家用ジェット機を持っている大金持ちだからいえる話だといえます。これを一般庶民が真に受けてしまうと、老後にしわ寄せが来て、大変なことになると思うのです。
こと不動産に関しては、堀江さんの話を疑う力を持ちましょう。
ひろゆき氏が「家は買うな」と言う理屈もかなり苦しい

ひろゆきさんは日経テレ東大学の番組に出る時などは、しっかりデータを調査してから収録にのぞんでいます。
ところが、不動産に関しては「知ってるつもり」になりやすいためか、あまりデータを見ていないようです。
この記事ではひろゆきさんの間違いを指摘しています。しかし、不動産ジャンル以外では、たとえば旧統一教会を批判する論陣の張り方などについて、筆者はひろゆきさんを高く評価しています。
「10年後に地価が上がるなら買うべき」は人間には不可能
ひろゆきさんは、家を買うか買わないかの判断基準を以下のように説明しています(YouTube動画)。
10年後に地価が上がるのであれば買うべきです。10年後に地価が下がるんだったら買わないほうがいいですねっていう話で、今買おうとしている場所の賃貸の値段がいくらなのか、地価がどう動くのかっていう問題で決めたほうがいいと思います。はい。
YouTube動画より
この短いコメントの中に、2つの間違いがひそんでいます。
- 10年後に地価が上がるか下がるかを判断するのは不可能
- 仮に価格が半額になっても、家は買った方が有利
まず、10年後に地価が上がるか下がるかは誰にも判断できません。それが確実にわかるなら、大もうけできるはずです。
また、地価(というより不動産の価格)が半額になったとしても、賃貸よりも持ち家の方がトクです。

ここでは話をわかりやすくするために、
- 10年ローンで1200万円の物件を買う
- 10年間家賃10万円の家に住む
ケースを比較します。
不動産価格が半分に暴落したとしたら?10年ローンで1200万円の持ち家を買ったら、月々の支払額は105,124円で、10年後に残る価値は600万円前後です。
10年間、家賃10万円の賃貸物件に住み続けたら、10年後に残る価値は0円です。
仮に不動産価格が半額になっても(都市部ではあり得ない想定ですが)持ち家の方が600万円トクです。
新築を避けて、できるだけ将来有望な駅に近い物件を買うなどの自己防衛策を前提とすれば、高確率で持ち家が有利となります。
「歳を取って賃貸してもらえなくなったら買え」はムダが多すぎ

よく「歳をとって70代、80代になったら家を貸してもらえなくなる」という議論があります。
大家もビジネスなので、「孤独死などの確率が高い老人に家を貸したくない」と考えます。また、日本の法律は入居者有利に作られており、いったん家を貸してしまうと、追い出すことができないため、なおさら「誰に貸すか」を慎重に選びます。
これに対して、ひろゆきさんは次のような持論を述べています。
最初から賃貸でいって、賃貸を誰も貸してくれなくなったら、貯めたお金で安いマンションを買ってください。
YouTube動画より
つまり、「あくまでも賃貸に住んでおけ」。その上で「誰も貸してくれなくなった時点で貯金を使って安いマンションを買え」という話です。
でも、これ、さすがにムダが多くないでしょうか?
たとえば30歳から69歳まで賃貸に住んだとして、約40年分の家賃は相当な額になります。
40年で支払う家賃家賃5万円の場合 | 2400万円 |
家賃8万円の場合 | 3840万円 |
家賃10万円の場合 | 4800万円 |
そのお金でマンションを買っておけばよかった……とならないのでしょうか? 家賃を払いながら将来買うマンションの資金を貯金するのは、住居費を2重に支出する事になり、家計が大変だと思います。
この点、勝間和代さんもひろゆきさんと同じようなことを言っていて、「賃貸に住んでREIT(不動産投資信託)を買え」という話もしていました。
それだったら普通に家を買っておくほうが、老後が楽になるはずです。
上記の40年分の家賃試算には、共益費、更新料、家賃保証料など各種諸費用は含まれていません。
日本の賃貸不動産の現状はかなり寂しい

これは評論家の古谷経衡さんがシラスの番組で紹介していたグラフですが、各国の持ち家と賃貸住宅の床面積を比較しています。
こうしてみると、日本の持ち家は意外と広く、アメリカより狭いものの、イギリスより広いことがわかります。

実は日本の住宅面積を狭くしている最大の要因は、日本の賃貸住宅が狭いことにあります。
このように、日本の賃貸住宅は国際的にも劣った環境なのです。
日本の賃貸住宅の床面積が狭い理由として、単身者向けのワンルームや1DK物件が多いという事も考えられます。しかし、ファミリー向けの賃貸物件でも40~50㎡代が多く、狭小です。
その他にも賃貸住宅にはさまざまな問題点が指摘されています。
古谷経衡さんは信頼できます
テレビなどで見かける人の中で、不動産に関して最も信頼できるのは、評論家の古谷経衡(つねひら)さん。ちゃんとデータを見ているので、信頼性の高い議論をされています。ちなみに持ち家に住まれています。
日本の賃貸入居者を搾取する仕組みがひどい
日本では借地借家法によって入居者の権利が強力に保護されています。そのため、水際で「高齢者を入居させない」という作戦に出ることは、すでに述べました。
他にも、法律の条文をかいくぐるようにして、入居者に不利な条件を押しつけるシステムが発達しています。
- 礼金というナゾのお金を取られる
- 本来大家から取るべき仲介手数料も入居者が負担させられる
- 本来大家から取るべき家賃保証料を入居者が負担させられる
とくに問題になっているのは、仲介手数料と家賃保証です。
仲介手数料は法令の本則では、入居者から半分・大家から半分もらうことになっています。ただし、事前の了解があれば入居者から全額徴収してもかまいません。
これを濫用して、常に入居者だけからすべての仲介手数料を受領しているのが、現在の不動産管理業者の実態です。詳しくは以下の記事で解説しています。
【不都合な真実】不動産賃貸の手数料は本来家賃の0.5カ月分|関連記事
また、家賃保証に関しても問題になりつつあります。
賃貸住宅を借りたらあたりまえのように支払わされる家賃保証料。本来は誰のためのものでしょうか?
実は、トクをするのは大家です。家賃を保証してもらえるからです。
また、家賃保証料の何割かは、不動産屋にキックバックされています。つまり、入居者がお金を払い、大家と不動産屋がトクをしています。
家賃保証のしくみ入居者 | お金を払う(ソン) |
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大家 | 家賃を保証してもらう(トク) |
不動産屋 | マージンをもらえる(トク) |
何といってもひどいのは、入居者が滞納した時、保証会社は一時立て替えるだけですぐに家賃を請求してくる点です。
家賃「保障」といいながら、ぜんぜん保障していません。
入居者の家賃は保証されるのではなく、一時立て替えてもらえるだけです。
しかも、3か月以上滞納すると、家賃保証会社は入居者を追い出しにかかります。入居者は、将来自分を追い出すかも知れない家賃保証会社にお金を払わされています。
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関連記事賃貸物件の探し方を間違えると超キケン。不動産屋によっては入居者をカモと考えている!
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ホリエモンをまねすると「老後破綻」しかねない

記事前半で触れたように、同じ住宅に一定期間住むことを想定すると、賃貸よりも持ち家に住むほうがコストが安くなります。
たとえば、政令指定都市の3LDKか4LDKの一戸建て住宅に35年間住んだ場合、賃貸と持ち家で1000万円以上の差がついてしまいます。
「賃貸と持ち家で1300万円の差」は本当なのか検証してみました|関連記事
すぐ上にリンクした記事で計算しているとおり、大阪府堺市で一戸建て住宅に35年住むとしたら、賃貸と持ち家で1300万円も差がついてしまいます。
それだけではありません。
老後は住宅ローンを払い終わった持ち家派と、家賃を払い続ける賃貸派で、より大きな差がついてしまいます。
今の高齢者が破綻しない理由は「持ち家率の高さ」

2020年の家計調査にもとづき、夫婦高齢無職世帯(引退したシニア世帯)の家計をグラフにすると、住居費に月々わずか14,600円しか支出していないことがわかります。
なぜ、住居費をこんなに低く抑えられるかというと、この世代のずば抜けた持ち家率の高さがその理由です。

このグラフでわかるとおり、65歳以上のシニア層では持ち家率がほぼ8割(70代では8割以上)となっており「ほとんどの人が持ち家に住んでいる」くらいの状況です。
この持ち家率の高さこそが、今の高齢者が老後破綻しない理由となっているのです。
実は金融庁が発表して話題となった「老後2000万円不足問題」。その試算でも持ち家世帯がモデルでした。賃貸世帯であれば、さらに老後資金が不足してしまいます。
結局「賃貸がいい」と言えるのはお金持ちの特権だった

いうまでもなく、ひろゆきさん、堀江さんたちは相当なお金持ち。だからこそ持ち家を否定し、ホテル暮らしをしたり、フランスに住んだりすることができます。
堀江さんが住んでいた六本木ヒルズは月額家賃100万円を超える部屋も普通にあり、1年住めば地方の中古住宅がラクラク買えます。やはり、お金に関する感覚は我々とは桁違いだといえるでしょう。
彼らのいうことを信じて一生賃貸派を貫いた場合、一般庶民としてはかなり厳しい老後を生きることになります。
「自分に家を買えるのか」はスマホでチェックできる
一生賃貸派でいくべきか、家を買うべきか? それを考える上で「自分にどんな家が買えるのか?」を確認しておくと、さらに具体的な判断ができます。

国土交通省のデータでも、持ち家のほうが満足度が高いことがわかっています。ムリなく買えるのなら、購入を検討してみるのも悪くないでしょう。
スマホがあれば確認できる住宅ローンは非常にわかりにくく、以前は融資について調べるのも大変でした。しかし、今はスマホで知りたいことがわかります。
- 自分に最適な金融機関・銀行はどこか
- 自分にはいくら借り入れできるか
- いくら借りたら月々の返済がいくらになるか
こういった質問の答えは、無料のサイトで瞬時に算出してもらえます。
モゲチェック|公式サイト
ほぼすべての都市銀行・ネット銀行と提携するモゲチェックであれば、住宅ローンの計算は非常に正確です。また、銀行が支出する広告費で運用されており、ユーザーは無料で利用できます。
こういったツールを使って「自分にどんな家が買えるのか」を判定しておくと、なんとなく敬遠していた持ち家が身近になるかもしれません。

なお、モゲチェックについて詳しくは以下の記事で解説しています。
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