不動産を売る

不動産売却「専任媒介のメリット」を全て論破。基本はデメリットだらけです

2021年12月21日

不動産の売却依頼をするときの仲介契約を媒介契約といいます。この媒介契約には以下の3つの類型があります。

専属専任専任媒介一般媒介
複数社へ依頼××
有効期間3か月3か月決まりはない
レインズへ登録義務あり義務あり任意
業務処理状況の報告義務あり義務あり任意

専属専任媒介については記事末尾で「絶対必要ない」点を解説しています。

表を見ると一見専任媒介が有利そうですが、実は、専任媒介は原則として不動産屋にメリットが多く、ユーザーにメリットが薄い契約類型です。

ネットで発信する人たちの大半が不動産屋、もしくは不動産屋の利益を優先する立場の人たちです。

ですので今後とも「専任媒介がいい」とする情報がネットに多く氾濫していくでしょう。

そこで、この記事では専任媒介を勧める営業トークを、あらかじめ全て論破しておきました。

不動産屋の営業トークを聞くときや、ネットで様々な記事を読む時には、本記事で解説した専任媒介契約のデメリットを念頭において話を聞いてみてください。

フドマガ
きっと、彼らがいかに根拠のない話をしているかわかるはずです。

専任媒介は不動産屋にメリットあり

不動産業者にとって専任媒介契約は「少なくとも3か月間物件の販売を独占できる」というおいしい契約です。だからこそ専任媒介契約を強く勧めてくるのです。

なお、効率よく複数社とコンタクトを取る方法は、以下の記事で解説しています。

「不動産屋が熱心に売ってくれる」のウソ

よく言われる営業トーク
専任媒介契約であれば不動産会社が優先的に、積極的に売却活動をしてくれる。結果として早く成約する。
バリエーション広告費用をかけるなど積極的な販売活動を行ってもらいやすい。
反論

裏を返せば「一般媒介だったらやる気が出ない」ということでしょう。そんな不動産業者を信用することはできません。

実際には一般媒介であっても専任媒介であっても、やることはほとんど変わりません。

不動産屋のルーティン作業の中で……

不動産業者A
いやぁ専任媒介をもらえて嬉しいから頑張って売ろう。

と、モチベーションがアップするでしょうか?

残念ながらそういうことはほぼ考えられません。仕事ですからビジネスライクに普通に物件をさばいていくだけです。

またバリエーションとして「不動産会社が広告費用をたくさんかけてくれる」という都市伝説的な話もあります。しかし紙媒体の時代ならいざ知らず、現在はネット広告の時代です。

新聞広告などであれば出せば出すほど広告費がかさみますが、ネット広告は違います。一般媒介の物件であっても普通に広告できる時代になっています。

また、不動産屋は「一般媒介であっても広告を出したい」と考えています。

なぜならたくさん広告を出していれば出しているほど、その不動産屋は「手広くやっている」「物件が豊富だ」という印象になり、買い手を集めやすいからです。

フドマガ
一般物件だから広告しない……というメリットはありません。もし一般物件をちゃんと広告しない不動産屋がいたら、その会社は仕事ができないと判断してよいでしょう。

もし「一般媒介の物件はちゃんと広告しない」という不動産屋に当たってしまったら、そこに専任媒介で任せるのはたいへん危険です。

そういう会社はパスして、ちゃんとした会社に一般媒介で売ってもらいましょう。

「レインズに登録されるから安心」のウソ

レインズ登録なんて実質タダですよ……
よく言われる営業トーク
専任媒介ではレインズへの物件登録義務があり、全国の不動産会社へ物件情報を届けることができる。だから買い手が早く見つかる。
反論

一般媒介でも普通にレインズへ登録します。

レインズに登録された一般媒介の物件

レインズとは不動産業者だけが登録できる、全国規模の巨大な不動産情報データベース(正式名称は不動産流通機構)のことです(注1)。

専任媒介であれば、確かにレインズへの登録義務があります。

しかし一般媒介であっても、通常はレインズに登録します。そもそもタダで登録できますし。

一般媒介でもレインズに登録する理由

レインズに登録すると全国の不動産業者がこの情報を閲覧できますし、そのため売買契約が成立しやすくなります。従って、一般媒介であっても通常はレインズに登録します。登録しない理由がどこにもありません

そこで、「専任媒介でなければレインズに登録しない」というのはおかしな話だとわかります。

もし一般媒介物件をレインズに登録しないと言い張るのであれば、その業者は、

  1. 専任媒介でなければまともな扱いさえしない
  2. 一般媒介ならレインズに登録するわずかな手間さえ惜しむ

というダメ業者であることを、自ら証明しているといえます。

「専任媒介だからレインズに登録されるので有利ですよ」という、明らかにウソのトークで営業している業者は、むしろ避けた方が無難です。

普通の不動産業者は、一般媒介であってもレインズに登録し効率よく売却しようとします。

物件を囲いこもうとしているかも?

不動産業界には「囲い込み行為」という悪しき風習があります。基本的には囲い込み行為は専任媒介でないとできないので、一般媒介を極度に嫌う業者は「囲い込み」を狙っているかもしれません。

注1……レインズとは国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営しているコンピューターネットワーク。全国の不動産業者が、全国の物件情報を閲覧できます。

専任媒介契約なら2週間に一度の報告義務がある?

よく言われる営業トーク
専任媒介契約では、宅地建物取引業法によって一定期間ごとに顧客に業務の状況を報告する義務がある。そのためマメに連絡をもらうことができ状況を把握しやすい。
反論

確かに宅地建物取引業法には報告義務が明記されています。しかしこの法律はかなりザルで、その業務報告の内容が真実であることが担保されていません。

不動産業者A
あの物件思ったより反響がないんだ。売主への業務報告が苦しくって反響の件数を水増ししてしまったよ(笑)。

不動産屋ばかりの飲み会の席で、このような話を聞くことがあります。まわりの人たちは当たり前のように受け流すか、笑っています。

つまり、ウソの報告がまかり通るということです。

仮に専任媒介契約だから定期的に業務内容の報告を受けた……としても、それが真実の内容だとは限りません。

なぜなら、報告書の内容が真実だと担保する仕組みがどこにもないからです。

ある意味不動産の営業マンが数字を盛り放題ですし、それを証明する必要もなければ、エンドユーザーが確かめる方法もありません。

フドマガ
逆にまっとうな不動産業者であれば、一般媒介であっても一定期間ごとに業務情報処理報告書を提出します。

専任媒介契約でなければ業務状況の連絡さえしない……ということであれば、その業者とは媒介契約を締結しないでください。

「さまざまな特典が無料でついている」のウソ

よく言われる営業トーク
大手仲介業者の場合、無料で様々な特典が付いてくる。また売れない場合に買い取ってくれる「買取保証」もある。
反論

確かに大手仲介業者の付帯サービスの中には魅力的なものもありますが、よくよく考えるとそれは売主ではなく買い手側にメリットがあるケースがほとんどです。

また「買取保証」については論外だといえます。

売れない場合に買い取ってくれるとしても市場価格で買い取ってくれるはずはなく、不動産業者が買い取っても損をしない価格に値切られます(一般に市場価格の半額~7掛け程度)。

ですので無料でついてくる特典は、所詮無料でついてくる特典だと考えましょう。無料サービスには、あまり期待をしないのが正解です。

なお、買取については以下の記事でも細かく解説をしています。

また無料サービスをうたう大手不動産仲介業者ほど、囲い込み行為をしやすいというデータがあります。

不動産の囲い込みに関しては売主にとって深刻な損害を生じさせる可能性があるのでぜひ頭の片隅に置いておいてください。

無料特典は誰のためにあるか

無料特典の中には「本来、仲介業者の物件調査がしっかりしていれば不要ではないか?」「法律的には仲介業者が責任を負うべき項目ではないか?」という点を保証するものもあります。特に売主のためではなく、不動産業者の安全のために存在する特典もあるのです。

窓口を1つにでき、不動産会社とのやりとりが楽になるのウソ

一般媒介でも窓口を1つにできますよ
よく言われる営業トーク
一般媒介契約ではなく専任媒介にすれば、1社とだけ連絡を取ればいいので、不動産屋とのやり取りが楽になる。
反論

これも論理的には間違っています。どうしても複数の不動産業者とやり取りをするのが面倒であれば、一般媒介契約で1社にだけ任せればよいのです。

1社とだけやり取りをするのは、専任媒介でなくても可能です。

一般媒介で1社に任せておけば、当初のやりとりはラクですし、万が一任せた不動産会社の働きが悪かったり、信用できない場合には、スムーズにもう1社に仲介を依頼できます。

専任媒介を避けるべき理由を業界の構造から解説

ここまでは不動産業者がよく使う営業トークに反論することで、専任媒介契約を推してくる理屈を論破してきました。

フドマガ
主な「専任媒介推し」はすべて論破していると思います。

では、逆に言えば専任媒介契約を避けるべき理由はどこにあるのでしょうか?

売主と不動産業者の思惑は一致しない

不動産屋社内でありがちな光景

不動産業者にとって、専任媒介契約は「少なくとも3か月間は販売を独占できる」というおいしい契約です。なので不動産業者は専任媒介を取ることを1つのゴールととらえています。

多くの不動産業者には営業ノルマが課せられていますが、売り上げのノルマの他に媒介ノルマというものもあります。定められた件数の専任媒介契約を取ると、ノルマを達成できます。

不動産営業マンはノルマを達成しようとして専任媒介契約を勧めてきます。そのため契約が取れるとほっとして、ひと仕事終わったという感覚になります。

ノルマ達成のための営業トークは、この記事の冒頭ですべて論破した理屈に基づいています。

一方、売主にとっては専任媒介契約を締結したところがスタートであり、ここからできるだけ早く成約してほしいと願っているはずです。

不動産営業マン専任媒介契約さえ取れば後は急がなくてもいい
売主専任媒介契約を結んだのだからできるだけ早く売ってほしい

このように、不動産業者と顧客の思惑は大きくずれています。不動産営業マンが急がなくていいのは、専任媒介の特徴です。急がなくてよい=販売を独占できるという不動産業者にとっておいしい特徴をいかして、不動産の囲い込み行為も可能になります。

不動産売買の構造上の問題もあり、原則として専任媒介を選ぶメリットはないと考えるべきです。

一般媒介の方が専任媒介よりも安心できると断言できます。

例外的に専任媒介をおすすめするケース

更地にしないと売れない土地などは専任媒介もあり

しかし専任媒介契約にも一定のメリットがあります。それは、契約を結んだ不動産業者の責任を明確にすることができるというポイントです。

  1. 問題があって売りにくい物件
  2. 実家など遠方の不動産を売りたい場合
CASE 1隣の敷地との間に境界の紛争や問題があり、それを解決しないと売買を完了できない
CASE 2相続が複数回発生するなどして権利関係がややこしくなっており、粘り強く解決する必要がある
CASE 3住宅ローンが滞るなどの問題があり、金融機関との交渉が必要
CASE 4遠方の実家を売却したいができるだけリモートで済ませたい

このように問題を解決しないと売却できない物件であれば、一般媒介契約で複数社に仲介を任せてしまうと次のような問題が心配になります。

一般媒介だと誰も責任をとらない……

例えばA、B、C社の3つの会社に仲介を依頼した場合、A社とB社は「C社が問題を解決してくれたら売却活動に取りかかろう」と考えます。一方C社は「A社とB社が問題を解決してくれたら売却活動に取りかかろう」と考えます。

これでは誰も問題を解決せず、売却活動が前に進みません。

そこでこのようなケースでは、信頼できそうな営業マンを見つけるという条件で、専任媒介契約をお勧めします。専任媒介であればその会社と営業担当者の責任が明確になるため、面倒な問題解決であっても避けて通ることができません

また、不動産屋の立場で考えても「専任媒介で任せてもらえるなら、やるしかないか」とモチベーションを保つことができます。

そこから、売却活動が比較的前に進みやすいといえます。

付録:専属専任媒介は締結するメリットがまったくない

専任媒介契約という類型は、売却が難しい物件で利用価値があると説明しました。ところが、専属専任媒介という類型は、ほぼ利用する価値がありません。

専属専任媒介では自己発見取引が禁止される

専属専任媒介の注意点は、自己発見取引が禁止されること。つまり、自分が買い手を見つけてきて契約するということができません。

たとえ自分で買い手を見つけても、必ず仲介依頼をした不動産屋を通さなければならないという規定になっているのです。

専属専任媒介はかなり特殊な契約形態であり、通常はまったく考える必要がありません。もし専属専任媒介を勧めてくる業者がいたら、かなり怪しいなと思います。疑ってかかってください。

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