住宅ローンの残債務が残っているマンションの売却については、2つの点に注意する必要があります。
- 売却代金でローンの残債務を完済できるか?
- 今のローンの支払い状況は問題ないか、滞納しているか?
それを踏まえて、この記事では以下の6パターンに分類しました。
現状 | 解決策 | 緊急度 | |
---|---|---|---|
ローン完済できる | 返済は問題ない | 専門サイトで売却を検討 | ☆☆☆ |
今返済が苦しい | なるべく早く売却する | ★☆☆ | |
今返済が滞っている | 任意売却を一応視野に入れる | ★★☆ | |
ローン完済できない | 返済は問題ない | 自己資金または住み替えローン利用 | ★☆☆ |
今返済が苦しい | 任意売却を視野に入れた対応 | ★★☆ | |
今返済が滞っている | 弁護士相談も念頭に迅速な対応を | ★★★ |
①ローンの残りをすべて完済できて、②支払いにも問題ない、という場合は、住み替えでも単純売却でもスムーズに手続きできます。
一方、ローンの支払いが滞っているという場合は慎重な対応が必要になります。また、早め早めに対策する必要が出てきます。

マンションの売出しに使えるサイトについては、以下の記事で詳しく検証しました。実在するマンションのデータを実際に入力するテストを行いレビューしています。
-
-
不動産一括査定やってみた!自社保有マンションを実際に売って注意点も判明
この記事では、マンション売却成功のカギを握る不動産一括査定サイトを実際に使ってみて、どのサイトが優秀か確認しました。 自社保有マンションも1戸売却。「具体的にどうだったか?」も掲載しました。 どの不動 ...
続きを見る
タップできる目次
CASE1:売却したお金でローンを完済できるパターン

借 金:残らない
支払い:問題ない
緊急度:☆☆☆
相談先:売却に強い不動産業者
このケースではローンの残債務が残っているとはいえ、マンションの売却額で完済できます。ほとんどマイナスの影響はなく、通常の不動産売買とほぼ同様の流れで売却可能です。
抵当権の抹消書類に注意
売却時には、今借りているローンの抵当権を抹消する必要があります。そのために必要な書類が「抹消書類」。借入先の金融機関に、あらかじめ事情を話して用意してもらう必要があります。残金決済(物件引き渡しのタイミング)で抹消書類が必要です。
また「本当に売却したら住宅ローンの残債務を全部返済できるのか?」は、しっかり確認しておいてください。以下の記事で、高く売れるマンションの条件を確認してみるのもおすすめです。
参考マンションが買った値段で売れる条件は? データから判定し、より高く売るコツも紹介
ローンが残っている物件を売る「基本の流れ」はこれ!

ローンが残っていても、マンションの売却価格でローン残額をすべて返済できるなら、ごく普通の売買と同じです。

マンション売却の流れについては以下の記事で詳しく説明していますので、通常の流れはそちらでご確認ください。
参考マンション売却の手順と手続きはこれで完璧。必要書類のチェックリストもあります
これ以降は、上記の「基本の流れ」に加えて、どんな注意点があるのかをケースごとに見ていきましょう。
CASE2:ローンは完済できるが返済が厳しくなっている

借 金:残らない
支払い:厳しくなった
緊急度:★☆☆
相談先:売却に強い不動産業者、ファイナンシャルプランナー
ここでは、ローンの支払いが厳しくなってきたがまだ滞納は発生していないケースの対処方法を解説します。
結論としては、ネットの一括査定サイトなどを利用して3社に売却を依頼します。その3社の構成は、大手系2社+物件近くの地元業者1社がおすすめです。
またこの段階で住宅ローンの借入をしている銀行・金融機関と相談して、リスケジュールができないか試してみてください。
売却にかかる時間から逆算すると意外と厳しい

一般に、マンションの売却にかかる時間は1~3か月程度といわれています(上のグラフは東京カンテイによる/注1)。
しかし売出し前の準備から考えると、実際には3~6か月と考えるべきです。さらに、申込み後のキャンセルや、手付け放棄による契約解除などの可能性を考慮すると、6か月以上かかることを前提にスケジュールを組んでください。

そう考えると、意外と時間の余裕はありません。早め早めに行動しましょう。
注1……2017年5月9日のプレスリリース『首都圏 売出し開始から1カ月以内で成約に至った住戸の価格乖離率は-3.00%(東京カンテイ)』よりデータ取得。グラフは当サイト作成。
半年以上の時間をしっかり確保する戦略を立てる
このケースで仲介不動産業者を選ぶ戦略は、①はやく売る能力がある大手仲介業者と、②万が一長期化しても粘り強く営業してくれる地元中小業者の、2つを組み合わせること。大手業者の瞬発力に期待しつつ、長期化しても大丈夫な態勢が理想です。
マンション売却に強い不動産の一括査定サイトは以下の記事でテスト&レビューしていますが、結論からいえば、マンションナビ、リガイド、リビンマッチを使えばよいと思います。
参考証拠あり!本当に役立つマンション売却の「不動産一括査定サイト」を特定しました
とくにマンションナビであればマンションを得意とする業者が集まっているので、マンションを早く売却したい時に有利です。
参考マンションナビ……マンション専門の査定サイト
地方圏で対応する業者が少ない場合には、マンションナビに加えてリガイドかリビンマッチを試してみてください。きちんと仕事をしてくれそうな仲介業者を複数見つけるのが目的です。
参考リガイド……当社テストで好成績
参考リビンマッチ……任意売却など幅広く対応
売却時間を確保するためにリスケジュールの提案も有効
マンションに限らず不動産の売却時には、以下のような法則が存在します。
高く売却する | はやく売却する |
時間がかかる | 値段が安くなる |
つまり、高く売ることとはやく売ることは、相反する目標なのです。そして、このケースでは「マンションを高く売却して、残りのローンを全部返済する」ことが最大の目的なので、しっかり時間を確保してから売り出すのが正解です。

そこで、金融機関に相談に行くにあたって「支払いが厳しくなってきたので、リスケジュールはできないか」という提案もしてみてください。
銀行も支払いが完全にできなくなって競売にかけるよりも、多少時間がかかっても確実に回収できる方が有利ですから、リスケジュールに応じてくれる可能性はあります。
リスケジュールとは?
リスケジュールは返済計画の変更のことで、たとえば返済期間を延長するなど、より支払いやすい条件に変更することをさします。「月々の返済額を小さくすれば当面は支払いを続けられる」ということであれば検討の余地があります。
ただし、金融機関がリスケジュールに応じてくれるかどうかの判断は各社ごとに基準が異なります。事前に住宅ローンに詳しい不動産業者またはファイナンシャルプランナーなどに相談しておくことをおすすめします。
売却力のある仲介業者を選ぶ
このケースでは「一定期間内に相場で売却すれば大事には至らない」といえますから、仲介業者の実力さえしっかりしていれば、あとは何とかなります。販売力がある大手仲介業者と、万が一時間がかかったときにコツコツ営業を続けてくれる近隣地場業者を組み合わせてください。
CASE3:ローンは完済できるが支払いを滞納している

借 金:残らない
支払い:滞納している
緊急度:★★☆
相談先:任意売却に強い不動産業者
住宅ローンの返済が一度でも滞った場合、一刻の猶予もなくなります。なぜなら、住宅ローンの契約書には「期限の利益の喪失」について決められており、ローンの返済が滞った場合に、金融機関はお金を借りている債務者に対して「全額をすぐに支払ってください」と請求する権利があるからです。
そこで、この段階では、金融機関との交渉になれている不動産業者(任意売却を専門とする不動産業者)に売却を依頼するのがよいでしょう。また、通常であれば一般媒介をおすすめしていますが、任意売却に限っては1社だけに専任媒介で仲介を依頼すべきです。
期限の利益とは?
住宅ローンは月々決まった額だけ払えばよく、まだ支払期限が到来していない分は、先々に支払えばOKです。このようにまだ支払時期が来ていないお金は支払期限が来るまで支払う必要がなく、催告もされません。これを期限の利益といいます。
厳密にいえば任意売却ではないが、不動産業者選びは重要
「マンションを売却したお金でローンは全部返済できる」というこのケースは、任意売却ではありません。しかし、任意売却に詳しい不動産業者に依頼するのがベストです。
任意売却がわかっている不動産業者であれば、金融機関との交渉にも長けています。

金融機関に急かされてしまい「すぐに売却しないといけない」という状況になると、価格交渉でも足下を見られて不利な対応を迫られます。そうならないよう、余裕を持った売却活動をすることが必要です。
任意売却に強い仲介業者を選ぶ
任意売却に強い仲介業者を選ぶと、金融機関との交渉も行いながら有利な売却活動を進めてくれます。できる限り高い価格で売却するために、売り急ぎのない、しっかりした売却計画を立てましょう。
CASE4:住宅ローンを完済できないが返済にムリはない

借 金:残ってしまう
支払い:問題ない
緊急度:★☆☆
相談先:売却に強い不動産業者、住宅ローンに強いFP
マンションを売却した金額では住宅ローンの残代金を返済できない場合、対応方法は2つ。
- 自己資金で不足分を支払う
- 住み替えローンを利用する
通常はこのどちらかで対応します。
自己資金ですべて返済できる場合は問題がなく、記事の冒頭で紹介したローン返済中のマンションを売却する「基本の流れ」と同じ手順で進められます。
自己資金でまかなえず、住み替えローンを利用する場合は注意点があります。
実は要件が厳しい住み替えローンとはなに?
住み替えローン(買い替えローン)とは、今住んでいる家を売って買い替える際に、返済しきれないローン残額を含めて組める住宅ローンのことです。

たとえばりそな銀行の「りそな住みかえローン」であれば、新しく住み替える家の担保評価額+最高1,000万円まで融資を受けることができます。
住み替えローンの詳細は銀行・金融機関によってバラバラなので、まずは借入を申し込みたい金融機関で相談しておく必要があります。
おすすめサービスをひとつあげるとすれば、モゲチェックの「モゲパス」を利用すること。
モゲパスを使うと自分の借入可能額がわかります。その枠内で、提携不動産会社から物件を提案してもらうこともできます。
参考モゲチェック……自分の借入可能額がわかります
住み替えローンについて慎重に検討すべき理由

住み替えローンとは、新しく購入しようとする不動産以上の金額のローンを組むということです。つまり、そもそもオーバーローンの状態を前提としています。
そこで「次の売却はほとんど不可能」という前提で「終の棲家を探す」つもりでないと、利用はおすすめできません。
もうひとつの注意点は、担保評価以上に貸し出すため、金融機関の審査も厳しいという点です。つまり、誰でも借りることができるローンではありません。
そこで、住み替えローンについてはできるだけ慎重に検討し、可能であれば住宅ローンを専門とするファイナンシャルプランナーなどにも相談しておいてください。
住宅ローンに強い専門家に相談するとしたら?

対応不動産業者に宅建士だけでなくFPの資格ももっている担当者がいれば相談してみる価値は十分あります。しかし、それ以前に、金融機関窓口で相談した方がはやい可能性があるので、どちらがよいかはケースバイケースです。

住宅ローンを専門とするFPに、家計の見直しを含めて相談するというのもひとつの方法です。この場合、住み替えローンを組んで無理なく返済していけるのかどうかを相談することができます。
参考FPサーチ……住宅ローンに強いFPを検索可能
住み替えでなく単純売却の場合は、住み替えローンが使えません。そうなると自己資金でやりくりするか、売却をあきらめることになります。
このパターンなら「あえて売らず賃貸に」という選択も…
月々の返済に問題はないけれど、住み替えをしたいというパターンなら、あえて売らないという選択肢も考えられます。
前提として「もし賃貸した場合、家賃いくらで貸せるのか」を試算する必要があります。
一般的には月々のローン支払い以上の家賃で貸せることも多く、その場合はマンションを手放さずに賃貸することで、ローンの残額を返済できる可能性があります。
マンションナビであれば、売却査定を依頼するときに賃貸の査定依頼も付けられるので、試してみてください。
参考マンションナビ……賃貸同時査定が可能
注意点は、空室率を考慮しておくこと。総務省統計局の土地統計調査では、賃貸住宅の空室率は毎年17~18%です。実際にはエリアによって大幅にバラツキがありますが、収入に関しては1~2割ほど割り引いて計算しておいてください。

本来、住宅ローンは事業用資金には利用できません。賃貸してしまうと契約上問題が生じる可能性もあるため、この点を踏まえた自己責任での運用としてください。
このケースは対応方法が複数
住宅ローンを完済できないが返済にはムリがないという場合、手持ちの資金で補填する、買い替えローンを利用する、賃貸で活用するなど、複数の対応策があります。
CASE5:ローンを完済できず、なおかつ月々の返済が厳しい

借 金:残ってしまう
支払い:厳しくなった
緊急度:★★☆
相談先:任意売却に強い不動産業者、借入先金融機関
このケースなら「返済ができているうちに早め早めの対応をする」というのがポイントになります。

この段階であれば、まだ金融機関にリスケジュールの相談をすることができるからです。
金融機関に対してリスケジュールの提案をする
リスケジュールは記事前半で延べたように、返済計画の変更のことです。返済期間を延ばすことで、月々の返済額を低く抑えるなどの交渉を行います。
金融機関の担当者に月々の返済が苦しくなった事情を説明すれば、相談に乗ってくれるケースも多いはずです。
金融機関としても、競売などの手段をとるよりも、多少時間がかかっても返済してもらえた方がいいと考えています。
そこでお互いに歩み寄れる範囲はどこまでかを相談しておくのがおすすめです。
リスケジュールで解決しなければ高値売却を目指す
リスケジュールできなかった、リスケジュールでも支払いの厳しさは解消できないという場合、できるだけ高い値段での売却を目指すことになります。

そこで、任意売却にも詳しく、金融機関と交渉ができる不動産業者に仲介を任せるべきです。
不動産一括査定サイトの中で、任意売却に対応しているのはリビンマッチです。以下の記事を参照してみてください。
参考不動産一括査定サイト「リビンマッチ」とは? クチコミと利用のポイント
CASE6:ローンを完済できず、現在すでに返済が滞っている

借 金:残ってしまう
支払い:滞納している
緊急度:★★★
相談先:弁護士、任意売却につよい不動産業者
マンションを売却しても①ローンを完済できず、なおかつ②返済が滞っているという2つの条件が揃っている場合、自宅売却はほぼ避けられず、競売か任意売却かの選択になるケースが大半です(注2)。
任意売却 | 競売 |
---|---|
裁判所を通さない手続き 債権者と債務者が合意の上で手続き 市場価格に近い金額で売れる |
裁判所を利用する手続き 債権者が裁判所へ申し立て行う 価格は相場より安くなる事が多い |
競売になるまえに、任意売却を選択した方が有利です。
そこで、この段階であれば、弁護士もしくは任意売却を得意とする不動産業者に相談して、早めに任売の手続きに進む必要があります。

注2……個人再生と住宅ローン特則を活用するなど、マイホームを守る可能性はゼロではありません。詳しくは『住宅ローンが払えないとき「任意整理」と「個人再生」どちらを選ぶべき?』という記事を参照してください。
任意売却は金融機関と消費者が合意の上で進める
任意売却のキモは、あらかじめ金融機関が合意してくれて、マンションを売却できたときに「全額返済できていなくても、抵当権を抹消してくれる」というポイントです。抵当権を抹消できるからこそ、売却することができます。
そこで、まずは銀行などの金融機関を説得する作業からスタートします。

「金融機関との交渉は苦手だ」と感じている場合は、以下のサイトで任意売却が得意な不動産業者を選定するか、あるいは弁護士に依頼するという方法をとります。
参考リビンマッチ……任売に対応する数少ない査定サイト
金融機関との交渉が難しそうなら弁護士との相談が安心
弁護士に頼むと高そう……という印象がありますが、こと借金問題に関しては「最初の相談が無料」という弁護士事務所が大半です。もし「銀行と相談するだけでは解決しない」と感じている場合、以下の記事で紹介しているような弁護士事務所に相談すると、解決の糸口がつかめます。
参考借金の督促をストップ「債務整理に強い」おすすめ弁護士事務所ベスト4
もし「住宅ローンが払えないので消費者金融で借りた」というように、多重債務の状態になっている場合、間違いなく弁護士に相談するべきです。
上記の記事のなかでも一番おすすめのイストワール法律事務所(全国対応)は、借金問題にとくに力を入れており、口コミでもかなり反響がよい事務所です。
こういった法律事務所に相談すれば支払いの催促もストップでき、落ち着いた生活を取り戻すことができます。
参考弁護士法人イストワール法律事務所……クチコミ上位の法律事務所(初回相談無料)
まとめ「住宅ローン返済中のマンションでも売却できる」

この記事では6つの類型に分けて、住宅ローン返済中のマンションを売却する方法を検討してきました。
ポイントをおさらいしておくと、住宅ローンの支払いが苦しいときは、以下のような点に気をつけてください。
- 住宅ローンの支払いが厳しい場合は早めの対策がベスト
- 住宅ローンの滞納が始まっている場合は任意売却などを検討
- 弁護士事務所に相談すると落ち着いた日常生活が戻る
ローンの支払いに問題がない場合は、通常の売却と変わりません。ただし、今住んでいるマンションを売却してもローンを完済できない場合は、次の方法で不足分を補填します。
- 足りない分を自己資金で補填する
- 住み替えローンを利用して足りない分を補填する
もしくは、売却をせずに賃貸物件として貸し出すこともひとつの選択です。
売却、貸し出しの同時見積りが取れるマンションナビがおすすめのネット査定サイトといえます。
参考マンションナビ……マンション専門の査定サイト
また住宅ローンで悩んでいる方は、以下の記事も参照してみてください。