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不動産屋の選び方を元不動産会社社長が解説!業界の裏側や、失敗しないコツを公開します

2021年4月6日

不動産業者はたくさんあり、コンビニエンスストア店舗数の2倍以上にのぼります!

コンビニエンスストアは約5万5千店舗ですが、不動産業者数は12万5千以上とかなりの数です。

出典:一般社団法人不動産適正取引推進機構ほか

上記の表はいずれも令和元年度の数字です。

コンビニエンスストアの2倍以上ですから、不動産業者の数が異常に多いことがわかります。これほど数が多いのは、その84.2%が従業員5人未満の零細業者だからです。

不動産業者の8割以上は従業員5人未満の零細企業!

そのため、不動産業者のレベルは一定せずバラバラです。しっかりした営業マンなら法律や建築の知識もきちんと身につけていますが、どちらかというと勉強していない人の方が多い印象です。零細企業だらけなので、勉強するかしないかは、個人の努力にかかっています。

ページ内リンク不動産屋選びの具体的チェックポイントはここ……今まさに迷ってる人はここから。

また、今でも情報化されておらず、物件資料のやりとりもファックスが主力。ここ数年でようやく、メールにPDFを添付しても文句を言われなくなりました。

フドマガ
不動産業界は非常に情報の風通しが悪く、IT化から遅れています。だからこそ囲い込み行為のような、たちの悪い習慣がはびこっているのだといえます。

参考不動産の囲い込み行為とは?……物件を「売る」人は必見

この記事では不動産売買における不動産屋の選び方を解説しています。賃貸業者の選び方は、以下の記事をぜひご参照ください。

賃貸物件の探し方を間違えると超キケン。不動産屋によっては入居者をカモと考えている!

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DXで不動産屋選びはどう変わる?

これまでの不動産屋選びでは「大手仲介業者か、地元零細業者か?」という、二者択一を迫られるように感じます。

しかし、大手仲介会社も、中小零細業者も、それぞれに問題があります。

大手不動産業者は「囲い込み」しがちとの指摘が

大手仲介業者はコンプライアンス面などはしっかりしていますが、ガッツリ利益を追求してきます。豪華なオフィスや自社ビルを維持するためには、数字を上げる必要があるからです。

それが理由だと断言はできませんが、大手仲介業者は「囲い込み行為」をしやすい傾向があると指摘されています。

参考不動産の囲い込み行為とは? 対策方法を含めて徹底解説しています

詳しくは上の記事で説明していますが、不動産の囲い込み行為というのは自社の手終了を最大化したいために、他社に物件を紹介しないという悪習です。

売主と買主の両方から仲介手数料をもらうことで、できるだけたくさん儲けたいという下心から、他社に物件を売らせずに囲いこむため「囲い込み行為」という名前がついています。

この囲い込み行為、データで見ると、大手不動産仲介会社の両手仲介率が異常に高いことがわかります。

特に一部企業はほとんどの物件を両手仲介(売主・買主双方から仲介料を取る)でまとめており、高確率で物件を囲いこんでいると報道されました。

大手業者を利用するなら都市の売れ筋物件

大手仲介業者を利用するなら、売れ筋の物件が安心です。物件を囲い込まれても、それなりに問題なく売れていくからです。

ただし、ちゃんとした価格で一定期間内に販売してもらわないといけないので、価格査定に定評がある業者を利用した方がいいでしょう。大手仲介業者の中では「リハウス」で知られる三井不動産リアルティがおすすめです。

三井のリハウスは「正確な価格査定」を打ち出している、数少ない仲介業者だからです。筆者の知る限り、大手で「正確な価格査定」を売りにしているのはリハウスだけです。

また、リハウスについて詳しくは以下の記事で紹介しています。

関連記事リハウスとは? 三井不動産リアルティの特徴・評判・メリット・デメリット

「三井のリハウス」は、三井不動産リアルティの「ブランド」で「住み替えする」という意味があります。1980年代、宮沢りえを起用したCMで「リハウス=住み替え」を強く印象づけました。 三井はなぜ、このブラ ...

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地域密着型の地場業者はレベルがバラツキすぎ

大手がダメなら駅前の不動産屋は? と思ってしまいますが、小規模業者はとにかく能力にバラツキがあり、安心して任せることができません

不動産が好きで、しっかり最新の法律を学び、建築についても理解しようと努力している業者もいます。しかしそれは「たまたま個人的に能力が高い」というだけで、多くの場合はそれほど知識もなく、最新情報を知る努力もしていないと思います。

少なくとも、私が実務で接してきた多くの地域密着系地場業者で、尊敬できる人はほんの一握りでした。

売出しなら一般媒介で2社ないし3社に任せるべき

もし不動産売却を考えていて、そのために不動産業者を探しているという場合は、ネットの一括査定サイトで複数社に査定書を出してもらい、そこから2社または3社に仲介を依頼してください。

1社だけでは相場や最近の物件の動きをつかみにくいのですが、2~3社と話すことで大まかな相場感も見えてきます。

都市部であれば、少し上で紹介した三井のリハウスを軸に、地場業者を1~2社交えたラインナップとするのが効率的です。こうしておけば原理的に囲い込みができませんし、大手+地場業者それぞれの強みを生かせるからです。

経験上、イエウールであれば地場業者が多く登録しています。

不動産DXで業界の閉鎖的環境に変化が……

最近になって、情報が閉鎖され遅れた環境にあった不動産業界を、変えようとする会社が現れ始めました。

不動産 DX

不動産テックや不動産DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉をよく聞くようになりました。他の業種より遅れていますが、不動産業界でもデジタル化が始まっています。

たとえば住宅ローンに革命をもたらしたMFSのモゲチェックは、フィンテックと不動産テックの両方にまたがるサービスです。

モゲチェックは「自分がいくら借りられるか」をエビデンスをもって算出してくれる「モゲパス」や、「自分に借りられるナンバーワン金利」を提案してくれるなど、住宅ローンの借り方を大きく変えてくれます。

参考住宅ローンの便利ツール「モゲチェック」 ……家を買う時かなり役立ちます(無料)

これまでは不動産屋が紹介してくれる金融機関に相談するか、給料の振り込み口座がある銀行に行くか……という2択が一般的でした。

しかし、それでは最適な融資申込先を探すことは不可能です。

そこに、不動産テックの力で「ベストな金利を探す」「あらかじめ借入可能な金額を把握する」といった、非常に有益な情報を手に入れられるようになりました。

不動産屋選びの具体的チェックポイント

この章では、

  1. 不動産を売る
  2. 不動産を買う

の2つの観点に分けて解説をしていきます。

不動産を売るなら一般媒介で2~3社に依頼する

不動産業者にはここまで見てきたような①閉鎖性(主に大手仲介業者)と、②実力のバラツキ(主に小規模地場業者)があります。

そこで、不動産を売却するときは、2社以上の仲介業者に一般媒介で依頼するようにしてください。仲介依頼をする業者の選び方は、以下の記事で解説しています。

参考プロが自分の不動産を売るなら「一般媒介」を選ぶ。その理由は?

一般媒介では1社だけでなく、複数の不動産会社に仲介を依頼できます。あまりに多くの業者に依頼するのはおすすめしませんが、2社ないし3社にすることで「囲い込み行為を防止」することができます。

複数の仲介業者を効率よく選ぶには、一括査定サイトを利用してください。仲介契約をしなければ一切無料で利用できます。

参考不動産一括査定サイト「リビンマッチ」とは? クチコミと利用のポイント

不動産売却に関しては、以下の記事にさらに詳しくまとめました。不動産会社を10年経営した経験とノウハウを盛り込んでいます。ぜひ読んでみてください。

【不動産売却】家を売るための基礎知識や流れ、諸費用、使うべきサイトを紹介します

不動産業者はボランティアではありません。「商売」ですから、自社が儲けるために都合のいい提案をしてきます。 フドマガ そうでなければ会社がつぶれてしまいますから、そこは理解してあげつつ、うまく利用してく ...

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不動産を買う場合は徹底的にネットを利用

不動産を購入する場合、予備知識なしで不動産屋に行ってしまうと、おそらく業者の都合がよい物件を勧められて終わります。

再度この図を見て頂きたいのですが、不動産業者間の情報流通は貧弱なため、それぞれの業者が提案できる物件は限られています。

レインズを見ればたいていの物件は掲載されていますが、一人一人の不動産営業マンが、すべてを把握することはムリでしょう。

そこで、まずは自力で情報を整理していく努力が必要になります。

athomeやsuumoといった大手不動産ポータルを丹念に見ていけば、ある程度相場が把握できますし、エリアの特性もわかってきます。

特におすすめの不動産情報サイトはニフティ不動産です。ニフティ不動産は大手ポータルサイトをまとめて検索できるため、ここさえ見ておけばathome、suumo、LIFULL HOME'Sなど名の通った大手サイトはすべて押さえられます

参考ニフティ不動産……大手ポータルサイトをまとめて検索できる

私自身が物件探しをした時の手順は、以下の記事で紹介しています。まったく土地カンのない場所への移住でどんな手順を踏んだかを書いていますが、通常の物件探しでも同じ手順で良物件を探すことができます。

参考【田舎暮らし】移住のための物件探しはこの手順で

Googleで不動産屋の口コミを検索しておく

売却、購入ともに、その会社の名前でGoogle検索してみることをおすすめします。Googleマイビジネスに登録されている会社データの他、Googleのユーザーが書き込んだ口コミを見ることができるからです。

あまりほめすぎの口コミはヤラセかもしれません。ネガティブ情報のみをチェックしてみてください。

また、悪徳不動産業者の見分け方については、以下の記事で詳しく解説しています。

参考国土交通省が作った悪徳不動産業社リスト+悪質業者を見抜くその他の方法……当サイトの人気記事です

ポイント

不動産を売るなら一般媒介で2~3社に仲介依頼、不動産を買うなら最初にネットで徹底的に物件を調べ上げる……という点をぜひ押さえてください。

不動産屋がすすめるサービスは慎重に選ぶ

不動産に必須の資格といえば宅地建物取引士(宅建士)ですが、試験の科目は次の表のようになっています。

権利関係(民法など) 14点
宅建業法 20点
法令上の制限 8点
税その他 8点

50点満点で、民法や不動産登記法、宅建業法といった不動産の「取引」に関係してくる問題の配点が34点。法令上の制限では都市計画法や建築基準法などが出題されます。

しかし、融資や保険については出題されませんので、誰も勉強しません

お客さんの中には「銀行どこがいいですか?」とか「保険はどこでかけたらいいでしょう?」と尋ねる方もいますが、不動産屋に尋ねてもベストな回答は返ってこない場合が多いでしょう。

融資申込先銀行を紹介してもらうのはNG

どの銀行に融資を申し込むかという問題については、不動産屋はまったくあてになりません(一部研究熱心な業者は除きます)。

ほとんどの場合、不動産屋は、たまたま自分が知っている銀行の担当者を紹介してくれるだけです。

融資に関してはモゲチェックなど専門的な立場からアドバイスしてくれるサービスを利用してください。

参考モゲチェック……不動産屋でなく専門の無料サービスを使うのがベスト

火災保険申込みは不動産屋の収入源

不動産仲介会社の商業登記簿をとってみると、だいたい「目的」の欄に「損害保険代理業」と書かれているはずです。

保険会社と不動産屋も持ちつ持たれつの関係にあるからです。

不動産売買というライフイベントでは、火災保険をかけるのは前提になっています。ということは、不動産屋を代理店(取次店)にしてしまえば、そこからの保険契約が期待できるわけです。

不動産屋が保険契約を取ると、かなり割のいいキックバックがもらえます。だから自社に都合のいい保険を勧めてくる場合があります。

生協の火災共済など、安くて保障もしっかりした商品がありますから、わざわざ高い保険をかける必要はないでしょう。

不動産屋のお抱え司法書士がいいとは限らない

売買というのは「お金の支払い」と「物件の引き渡し」を同時に行います(同時履行といいます)。

ところが不動産の場合はもうひとつ問題があります。

物件を引き渡すだけでなく、登記名義を移転する必要があるのです。そして、一般的に不動産の所有権移転登記は申請してから1週間前後かかります。

もし、登記申請に問題があって所有権移転登記ができなかったら、買主はお金だけ払って自分の名義にできない! ということになります。

司法書士はこういう問題が起きないように、売主と買主が揃えた書類をチェックし、間違いのない登記申請書を作成する「登記のプロ」です。

単純な所有権移転登記でミスをする司法書士がいるとは思えませんが、難しい案件になってくると知識と経験の差が出ます。

不動産屋が「いつもこの先生に頼んでいるから」と勧めてくる司法書士が本当にいいのかどうかは、一度考えてみた方がよいと思います。

司法書士を探すなら、司法書士会に問い合わせてみるのがいいでしょう。

参考全国司法書士会一覧(日本司法書士会連合会)

不動産屋選びのQ&A集

ここから先はQ&A形式で、他のサイトに書いていないことや、書いていても「ちょっと違うのでは?」と思う点を解説していきます。

仲介手数料の「安さ」で選ぶのはダメ?

基本的には、仲介手数料の安さで選ぶのはやめておいたほうがよいでしょう。

なぜ仲介手数料無料や半額で営業できるのかを考えると、その理由がわかります。特に不動産を「売る」場合の仲介手数料無料・半額は避けるべきだといえます。

まず、あまり売り物件がない不動産業者は「仲介手数料ゼロ円」で売主を釣ります。そして、上の図のように、買主から仲介手数料をもらうことで利益を上げようとしています。

この図を見て、感じることはないでしょうか?

そうです、不動産屋にお金を落としているのは買主だけです。

つまり、不動産屋にとって真のお客は買主のみで、売主は「ゼロ円で仕入れた商品」といっていいでしょう。

その状態で誰の利益を優先するか? その点を考えると怖くなりますね。仲介手数料ゼロ円業者に依頼したばかりに、実は安値で物件を手放すことになっている可能性がありますし、契約上不利な条件になっているかも知れません。

一方買主の立場で仲介手数料無料といわれるケースは、そこまで危険性はありません。しかし、本当にお得かどうかは物件次第なので、わずか3%程度の仲介手数料ではなく、物件の良し悪しをしっかり見定めるようにしてください。

宅建業免許の更新回数って本当に関係ある?

不動産(宅建業)の免許番号についている(1)や(2)といった数字は、免許の更新回数を表しています。(1)の人は初めて免許されたばかりなので、宅建業をはじめて5年以内です。

(2)になると、1度更新しているので、業歴は6年以上ということになります。

そこから「免許番号(2)以上の業者がいい」という説明も見かけますが、それはまったくアテにならないでしょう。

とくに(5)とか(6)の業者になると、コンプライアンスがゆるい大昔に免許を取得していますから、かえって危険な場合もあります。

逆に(1)の業者は免許をもらったばかりですから、最新の法律知識が頭に入っていたりします。

実際には免許の更新回数は、不動産屋の良し悪しとはあまり関係ありません。

今でも「おとり物件」は存在するの?

売買物件で「おとり物件」というのはかなり少ないはずです。賃貸物件では存在するかも知れません。

その理由はおとり物件の仕組みを考えればわかります。

賃貸なら「さっき申込みが入りました。別物件ご案内しますよ」という流れで、おとり物件で釣った客に別物件の契約を持ちかけることもできますが、売買ではちょっと苦しい展開になります。

家1軒が「さっき売れた」と言われてもそも、そもウソくさいですから、それでダマされる人はあまりいないでしょう。

ただし、広告の下げ忘れというパターンはかなりよくあります。売れてしまった物件の広告を下げ忘れていて、なんとなくおとり物件風になっているのはたまに目にします。

深夜までやってる不動産屋は頼りになる!?

仕事終わりに足を運べるように、夜遅くまで営業している業者もありますが、こういった不動産屋は頼りになるでしょうか?

私は、「仕事が忙しくて休みが取れない」という人は、実は不動産を買うべきではないと思います。

不動産を買うというのは相当な手間と労力が必要だからです。私は世間の不動産屋をあまり信用していないので、物件は必ず自分で調査し直すべきだと考えています。

同業者の調査ミスや、顧客より自社の利益を優先する姿勢を、何度も見てきたからです。もし忙しくて平日休みを取れないようでしたら、仕事のペースをまず落としてください。そうしないと、高確率でダメ物件をつかまされてしまいます。


データ出典

『令和元年度末 宅建業者と宅地建物取引士の統計について』一般社団法人不動産適正取引推進機構
『CVS統計年間動向(2019 年 1 月~12 月)』一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会

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