不動産トピック

令和2(2020年)地価公示で予測するコロナ後の不動産

2020年10月6日

9月30日に都道府県地価調査が発表されました。各都道府県の地価調査を取りまとめている国土交通省では、毎年詳細なデータに加えて概要を公表しています。

今年の概要ではまず、「全国平均では全用途平均は平成29年以来3年ぶりに下落に転じた」としており、日本全体で見た場合に、住宅地は下落幅が拡大、商業地は平成27年以来5年ぶりに下落に転じたということが書かれています。

これを圏域別に見ると、次の表のようになります。

東京圏住宅地は平成25年以来7年ぶりに下落に転じ、商業地は平均変動率1.0%と8年連続の上昇であるが、上昇幅が縮小。
大阪圏住宅地は東京圏同様7年ぶりに下落に転じ、商業地の平均変動率は1.2%と8年連続の上昇であるが、上昇幅が縮小。
名古屋圏住宅地は8年ぶりに下落に転じ、商業地も8年ぶりに下落に転じて平均変動率-1.1%に。
地方圏住宅地は下落幅が拡大し-0.9%、商業地は2年ぶりに下落に転じて平均変動率-0.6%に。
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ただし、今回の都道府県地価調査の結果を見て「コロナの影響がこれくらいの規模になるのか」と判断することはできません。コロナの影響が出るのはまだまだこれからといえます。

今回の都道府県地価調査で公表された数字は、まだ「コロナ以降の不動産価格」を表したものではありません。以下の図をみるとわかりますが、前回の地価調査(2019年7月1日時点)から今回の地価調査(2020年7月1日時点)までの1年間の間でみると、前半は新型コロナウィルス流行の影響を受けず、インバウンドも増え続けていたからです。

今回の都道府県地価調査は、コロナ以後の不動産価格を、ある意味中途半端に反映したものとなります。この後、不動産価格がどれくらい新型コロナウィルスの影響を受けるのかは、引き続き考えていく必要があります。

それを前提としつつ、もう少し詳しく今年の都道府県地価調査の数字を見ていきましょう。

価格の下落が目立った地域

大きなエリアで見ると、名古屋圏を除く中部地方、四国地方、北陸地方と東京圏を除く関東地方でマイナスの変動率が大きい1年でした。

 住宅地商業地工業地
中部地方(名古屋圏を除く)-1.7-1.8-0.8
四国地方-1.3-1.5-1.1
北陸地方-1.1-1.4-1
関東圏(東京圏を除く)-1.1-1.1-0.3

価格が上昇した地域

住宅地に関しては東京圏でもマイナスに推移していますので、明らかに上昇したといえる圏域はありません。都道府県別で見ると、沖縄県の+4.0%が抜きん出て高いですが、それでも前年の+6.3%に比べると伸び率が鈍化しています。

商業地でみると、東京圏と大阪圏は伸び率が鈍化したものの、一応はプラスの推移となりました。

 住宅地商業地
東京圏-0.24.9
大阪圏-0.41.2

東京圏と大阪圏については、新型コロナウィルスの影響がなければ、少なくとも当面はある程度価格が上昇する局面にあったと思います。そこから、ワクチンが開発されるなどの理由でコロナウィルスが沈静化すれば、地価が再度上昇する可能性はあると考えています。

ただし、日本全体の地価推移をみると楽観はできません。

今回の地価動向の特徴

下の図は、過去18年間の地価調査で発表された全国の商業地の価格を当社でグラフ化したものです。平成20(2008)年の9月にリーマン・ブラザーズ・ホールディングスが経営破綻したことをきっかけに、世界規模の金融危機が起こりました。

日本ではその後2年間、きわめて厳しい経済状況が続き、その後3~4年間は回復の糸口がつかめない状況が続きました。

グラフでは平成25(2013)年に底を打つまで、商業地の価格が下落を続けていることがわかります。その間、平成23(2011)年に東日本大震災が発生しており、この災害による地価への影響も大きかったといわれています。

グラフが底を打った平成25(2013)年、第二次安倍政権による経済政策(いわゆるアベノミクス)が発表されました。グラフはそこから上昇に転じます。

アベノミクスに停滞が感じられ「実感なき景気回復」ともいわれた令和元(2019)年、それまで上昇していたグラフは横ばいに推移しはじめます。コロナショックは、そこで起きました

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ただし、グラフは全国平均です。3大都市圏、とくに東京圏ではまだまだ地価は上昇していました。マンションは好調でしたし、商業地の需要も旺盛でした。コロナショックは東京圏などでは地価が上昇しつつも、地方圏で地価下落の予兆が感じられる中で起きたということです。

経済も好調で、地価が上昇傾向にあるなかで起きたリーマンショックと、地価上昇に停滞の気配が感じられはじめた中で起きたコロナショック。この違いも、今後の地価の先読みを難しくしています。

コロナショックはどれくらい続くか?

経済学者など、エコノミストが分析する「コロナショックの先行き」は、完全にバラバラです。検索して出てくる意見を読んでみても、人によってまったく違う予測をしています。

媒体筆者趣旨
東証マネ部神山直樹氏市場動向は不透明だが、正常化し始めれば回復は早いと予想
PRESIDENT Online熊谷亮氏新型コロナショックは日本経済にリーマンショック以上の打撃を与える可能性が高い
中京テレビ内田俊宏氏コロナショック前の水準に戻るのに「3年程度かかるのではないか」と予測
DIAMOND online鈴木貴博氏世界恐慌の次に悪いレベルとなるオイルショック並みの危機を覚悟すべき
MONEY PLUSマネックス証券感染拡大さえ終息すれば、比較的早期に元に戻ることは可能ではないか

専門家の意見がバラバラな現状では、「まだ先行きを予測できる段階にない」と判断しておいた方がよいと思います。

先行きが見えない状況では、資金的体力がある個人や企業は数年単位で物件を保有しながら先行きを読んでいくことができますが、資金に余裕がない場合は売却を検討した方が無難といえます。不動産を保有し続けていて資金がショートした場合、かなり不利な売却を強いられるからです。下記の記事などを参照して、売却戦略を(一応は)立てておいた方がよいと思います。

参考【不動産一括査定】デメリットと、それを回避する利用方法

参考不動産一括査定サイト「リビンマッチ」のクチコミと利用のポイント

コロナショックの陰に隠れた事実

ここまでにも少し触れましたが、コロナ以前からみられた地価動向については、コロナ後も顕在化する可能性があります。気になるのは東京圏や大阪圏と、地方との格差拡大。見ておきたいのは、新型コロナウィルスが流行する直前の、令和2年地価公示(令和2年1月1日時点の地価)と、令和元年都道府県地価調査(令和元年7月1日時点の地価)です。

令和2年の地価公示では、国土交通省が発表した概要は、三大都市圏(商業地)について次のようにまとめています。

東京圏上昇幅が6年連続で拡大
大阪圏上昇幅が6年連続で拡大
名古屋圏上昇幅は昨年より減少した

三大都市圏の商業地では、東京圏と大阪圏が健闘し、名古屋圏が引き離されはじめた状況でした(住宅地も同様)。

一方地方圏について国土交通省は「平均変動率は0.5%と2年連続の上昇となり、上昇幅も昨年より拡大している」と評価しています。しかし詳細な数字を見ていくと、地方圏の基準地では、上昇した地点が32%だったのに対し、下降した地点は50%に及びます。ここから、地方4市を除く地方圏では、価格が上昇した地点より下落した地点の方が多いことがわかります。

つまり、地価については、日本全体では東京圏や大阪圏の価格が上昇し、地方圏が引き離される局面にありました。また地方を見ていくと、各地方の主要都市の価格が上昇し、周辺部では下降していました。日本全体では東京や大阪とその他の地域の格差が広がり、地方を見ると、その地方ごとに主要都市と周辺部の格差が広がっていたとみることができます。

ポイント

コロナショックがなかったとしても、東京圏や大阪圏と、それ以外の圏域との格差が広がっていたのではないかと考えられます。

この「新型コロナウィルス流行の直前で、東京圏と地方の格差が広がっていた」と見られる状況を、どうとらえるか? これもコロナ後をわかりにくくする、ひとつのポイントになります。

コロナ後、地方の復活も考えられるからです。コロナ後の新しい生活様式や、リモートワークの普及から、地方圏の人気が高まると予測する人は、格安となっている地方圏を調査してみてもよいと思います。投資対象として「地方」が注目されるかもしれません

地価公示と地価調査(参考)

公的機関が土地の価格(地価)を調査して発表する制度はいくつかありますが、代表的なものが地価公示と地価調査(都道府県地価調査)です。

このふたつは正常価格として公示されており、一般の土地取引の指標となるような数字といえます。

ほかに、路線価(固定資産税路線価や相続税路線価)も公的機関によりますが、こちらは正常価格ではなく税の算定の基礎となる数字です。

地価公示と都道府県地価調査についての違いを下の表にまとめました。

 地価公示地価調査
基準日1月1日7月1日
実施主体国土交通省都道府県知事
価格の名称公示価格標準価格
調査地点名称標準値基準値
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現状をまとめると、①新型コロナウィルス後の経済の先行きは専門家でも意見が分かれるので、②資金に余裕がある人は様子見でもよいが、③資金に余裕がない人は売却の方向を検討しておいた方が無難、という状況です。また、④コロナ後に地方に注目が集まるなら、価格の安い今が狙い目かもしれません。

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