不動産活用

【不動産売買】重要事項説明書の読み方<完全版>土地・一戸建て・マンション

2020年9月23日

普段なかなか経験することのない不動産売買。確かにわからないことが多いので「専門家に任せておけばいいかな」と思ってしまいがちです。ほとんどの場合、仲介会社も法令を守って、それなりに良心的に営業します。

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しかし私は、万が一に備えて「自分がどんな契約をしようとしているのか」しっかりわかる程度の知識は必要だと考えています。不動産に関する詐欺にあう人は、だいたいそこをおろそかにしています。

今回は若干長丁場になりますが、不慣れな不動産の契約に臨む場合は、ぜひ目を通して理解しておいてください。もし「急いで要点を知りたい」という場合は、以下の記事をおすすめします。

参考【不動産売買】重要事項説明書の読み方<一夜漬け編>

そもそも不動産売買における契約とは?

文房具や洋服など、動産の売買は次のように行われます。

  1. 代金の支払い
  2. 同時に商品の引き渡し

一般的な売買では、代金の支払いと商品の引き渡しが「同時履行」です。これは民法の条文に照らしても納得のいく、シンプルな取引です。

ところが、不動産の場合はそう単純にはいきません。買主は銀行融資が下りないと支払いができないのに、先行して契約をする必要があります。売主は、不動産を引き渡すだけではなく、登記名義の移転に協力する必要があります。

それらを解決するために、不動産の取引は少し複雑になってしまいます。そのために、契約時に手付金を支払い、すべての準備が整ってから残代金を支払う……という二段構えで取引をすすめるのが一般的です。

参考「不動産購入のステップ」……一戸建て売却。物件の売出し方や手順を詳しく解説しています

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このような複雑な取引を安全に進めるため、仲介会社には、売買契約前に重要事項説明書を交付することが義務づけられています。また、売買契約の前に契約書を完成しておく必要があるため、一般的には重要事項説明書と売買契約書を、売主・買主に事前確認してもらいます。

重要事項説明書の内容と全チェックポイント

この記事でも宅地建物取引業協会の書式に沿って説明します。宅建協会の重要事項説明書は、このようなページ立てになっています。

ページ記載内容
1表示・取引を仲介する宅建業者について
2登記簿表題部に記載された事項・測量図について
3登記簿権利部に記載された事項・第三者占有
4主に都市計画法に基づく制限
5主に建築基準法に基づく制限
6その他の法令に基づく制限の概要・私道負担
7その他の法令に基づく制限・インフラ関係
8取引の内容確認・契約の解除について
9手付金保全措置等(主に宅建業者に課せられた制限)
10添付書類・その他の事項
11売主・買主の署名押印欄

表示・取引を仲介する宅建業者について

取引を仲介する不動産業者(宅建業者)について説明するか所です。めったにないとは思いますが、その業者が過去に指示処分や業務停止処分を受けていないかも、確認しておいた方が安心です。

参考国土交通省ネガティブ情報等検索システム <宅地建物取引業者>

参考【参考 都道府県知事が行った監督処分情報】

上記サイトには、国土交通省や都道府県知事によって処分された業者と処分の内容が記録されています(過去5年分)。見ておいて損はないと思います。

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この記事を書くために国土交通省のネガティブ情報を閲覧してみて、顔見知りの業者が免許取消処分になっていたのに驚きました。やはり、念のためにこういう情報を見ておいた方がいいと思います。

不動産の表示等

2ページ目と3ページ目には、「不動産の表示等」「対象となる宅地または建物に直接関係する事項」と記載されていますが(宅建協会の書式の場合)ここには、登記簿に記載された事項が転記されている、と考えるとよいと思います。

前半では「売買対象がどんな不動産で、所有者は誰か」など、後半は「抵当権などの制限物権や差押えがあるか」が記載されていますが、全体的に登記簿を読めば書いてあることが多いです。ただし、第三者占有の有無などは、登記簿ではわからない事項です。

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ここで注意したいのはやはり、抵当権や差押えの登記の有無です。こういった登記が確実に抹消できるかどうか、納得できるまで確認してください。

登記簿謄本の読み方については、以下の記事も参照してみてください。

参考【不動産】登記簿謄本の読み方。危険箇所(差押、抵当権等)と注意点

都市計画法に基づく制限の概要

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超重要ポイントです。まずは「区域区分」に着目してください。

都市計画法に基づく制限の概要と、建築基準法に基づく制限の概要のふたつは、法令上の制限に関する最重要ポイントです。

都市計画法に基づく制限の中でも、もっとも危険度が高いのが「区域区分」のところで、「市街化調整区域」にチェックが入っている場合。

ポイント

市街化調整区域は、市街化を抑制すると定められたエリアです。ここでは、原則として住宅建築は認められません。

もし取引しようとしている物件が「市街化調整区域」に立地している場合、どのような緩和要件に該当して建築が可能となっているのか、必ず理解してから購入するようにしてください。建築そのものが可能か不可能かという、重大な判断を左右する項目です。

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そのほかの部分も全体的に重要です。「用途地域」はどのような建物が建築できるかを左右するポイントなので、ここも理解しておきたいところです。

建築基準法に基づく制限の概要

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「敷地と道路との関係による制限」が最も重要です。他社さんが作成した重要事項説明書で、間違いに気づいて慌てることが多かったポイントでもあります。

道路に関しては危険度が高く、しかも複雑で難解な部分がありますので、注意してください。「建築基準法42条の道路に該当しません」と書かれている場合は原則として建築ができませんので、特に注意深く重説を聞いてください。

接道については、ぜひ以下の記事もご参照ください。

参考【接道義務】土地がどんな道路に接していれば建築できるかまとめ

その他法令上の制限

都市計画法、建築基準法という重要な法律以外に不動産に制限を加える可能性がある法律について説明するパートです。ただし、50以上の法律の制限を1~2ページに詰め込むので、あまり深い説明はできません(注1)。

いずれの法律も重要ではあるのですが、あえていえば気にしておきたいのは、農地法、急傾斜地法、土砂災害防止対策推進法などでしょうか。「法令上の制限がある」といわれた場合は、宅建士から制限の内容を具体的に聞いておいてください。

マンションの場合の補足

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マンションの場合は「管理」についての説明が加わります。

マンションの管理に関して、購入後にかかってくる費用は「管理費」と「修繕積立金」のふたつです。管理費は、管理が同じクオリティーで行われるなら、安いほどよい費用といえます。

修繕積立金は、安ければよいというものではありません。むしろ適切な額が積み立てられているかが気になります。

国土交通省の「マンションの積立金に関するガイドライン」を一読しておくことをおすすめします。ここでは、修繕積立金の平均的な額をご紹介します。

建築延床面積平均値事例の3分の2が包含される幅
5,000㎡未満218円/㎡・月165円~250円/㎡・月
5,000~10,000㎡202円/㎡・月140円~265円/㎡・月
10,000㎡以上178円/㎡・月135円~220円/㎡・月
15階建て未満のマンションの場合

上記は機械式駐車場がないマンションについての集計です。マンションの修繕積立金についてはマンションごとのばらつきがおおいため、「事例の 3 分の 2 が包含される幅」という所も見ておき、これから買おうとする物件と比較するとよいと思います。もし建築延床面積が5,000㎡未満の小規模マンションで、専有部分の床面積が80㎡の物件を購入する場合、修繕積立金の平均的な額は月々以下のようになります。

218円 × 80㎡ = 17,440円

上記よりも少ないケースもよく見かけます。その場合、将来の大規模修繕に不安が残るということなので、注意してください。

参考「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」について(国道交通省)

その他の項目

重要事項説明書の最後のパートは、取引そのものの確認(金額や支払時期など)、契約の解除について、手付金の保全措置(これは宅建業者が売主の場合に限ってみておいてください)、などです。

そのあたりは重要度が若干下がるといえます。しかし、だいたい一番最後に入っている「その他」とか「その他重要な事項」とか「備考」と書かれた部分は、しっかり読み込んでください。その取引に特有の「何か」が書かれているからです。

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最近はここに、万が一にも宅建業者が責任を問われないための「容認事項」をコピペするのがはやっています。

コピペ部分はあまり意味がないケースが多いのですが、たまに致命的な記述が入っていることもあります。「その他」などの軽めのタイトルに惑わされず、ここはしっかりチェックしてください。

買主に不利な項目がさらっと入っていることもあります。

ポイント

この原稿を書いて改めて実感したのですが、不動産の重要事項を読むのには、本来相当な知識が必要になります。それを1時間や1時間半の重要事項説明で伝えるわけですから、かなり無理があると思います。不動産を購入する方は、できるだけ入念な用意をして臨んでください。


注1……その他法令上の制限で説明される法令は確かに50以上ありますが、ひとつの不動産で該当するのは2~3程度の場合が多いです。まったく該当しない場合もあります。多いときは数件該当することもあります。

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