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レオパレスに学ぶサブリース契約(一括借上げ)| トラブルとその理由

2020年6月6日

30年一括借り上げで家賃が保証されているサブリース契約。大家さんにメリットが多そうなのに、どうして問題が多発しているのかを解説します。

この記事でわかること

  • サブリース契約とは何か?
  • サブリース契約でなぜ大家さんが不利になるのか?
  • 国土交通省などの対応状況は?
  • レオパレス問題はどうなっているか?

借地借家法上どうしても家主が不利という大問題!

サブリース契約だと、どうして大家さんが不利な立場になるのでしょうか? ひとまず記事の結論を1分で先取りしてみましょう。

お客さん
サブリースって30年間一括借り上げだし、メリットが多いはずなのに、いろいろ揉めているのはどうして?
私が考える最も大きな問題は、借地借家法の規定です。大家さんより大手サブリース会社が法律で保護されているんです。それが根本原因といえます。
フドマガ
お客さん
だからサブリース会社は契約を簡単に解除できるのに、大家さん側からは解除できないということなんですね。
そうです。法律の盲点をついて大手企業が一般大家さんよりも法的に保護されているというのが実態です。
フドマガ

だから一方的に家賃が減額される、大家さん側からは解約できないのにサブリース会社からの契約は簡単にできるという問題が起きています。

つまりサブリース契約とは何か?

サブリース契約とは、古い言葉でいえば「転貸借」の一種です。法律用語を使わずに説明するとすればアパートの又貸し。サブリース会社は図のように、大家さんから建物を一括借り上げして、入居者に又貸しします。

大家さんは一般の入居者(エンドユーザー)と直接賃貸借契約を結ぶ代わりにサブリース会社に一括して貸すことになります。

サブリース会社は借りたアパートのひと部屋ひと部屋を、それぞれの入居者に対して又貸しをします。

サブリース契約には当然ながらメリットとデメリットの両方があります。大家さんにとってのメリット・デメリットを整理すると、次の表のようになります。

メリット

  • 空室リスクがなく家賃が約束される
  • 入居者の滞納リスクがなくなる
  • 賃貸募集や確定申告がラクになる
  • 仲介手数料やADを支払わなくてよい

デメリット

  • 実はサブリース会社から解約される危険がある
  • 実は家賃も保証されておらず減額交渉があり得る
  • 礼金や敷金はサブリース会社のものになる
  • 原状回復費用や修繕費用は大家さん負担になる
  • どんな人が入居しているか教えてもらえない

一見するとメリットが大きいようにも思われますが、サブリース契約で問題になっているのは、30年一括借り上げで空室を保証すると言いながら、実際には途中で契約を打ち切ったり、10年ごとに家賃を値下げされたりするという問題です。

フドマガ
上の表を見比べてみると、デメリットがメリットを打ち消していることが分かります。

どうしてこのような問題が起きてしまうのでしょうか? 本来借地借家法という法律が想定していなかったビジネススキームなので、その歪みが大家さんに押し寄せているのが理由です。

なぜサブリース契約は解約できないのか?

なぜ大手サブリース会社はサブリース契約を解約できるのに、大家さんの側からサブリース契約を解約することはできないのでしょうか?

それには借地借家法の第28条が関係しています。

本来借地借家法が本来予定しているのは、通常の借家契約です。普通の借家契約であれば、入居者の方が家主さんに比べて立場も弱く、経済的にも不利だと考えられます。そこで弱者である入居者を保護するという条文が設けられたのです。

借地借家法が想定していた力関係

もともとは上の図のように入居者よりも大家さんの方が経済力もあり立場も強い、という状況でした。そこで弱者である入居者を保護する条文が設けられました。

そのため、大家さんは簡単に賃貸借契約を解除できませんが、入居者は解除できます

サブリース契約で力関係が逆転

ところがサブリース契約では、個人である大家さんよりも大企業であるサブリース会社の方が立場も経済力も強く強者であるといえます。

つまり、法律の条文が変わらないのに、時代の流れによって生まれたサブリース契約では強者と弱者が入れ替わってしまっているのです。

借地借家法第28条で強者が保護されているという状況があるため、大家さんの側からはサブリース契約を解約できません。一方、サブリース会社の側からは簡単に契約解除ができてしまうことになったのです。

家賃減額請求も借地借家法により拒否できない

また、本来30年一括借り上げで家賃を保証するはずだったサブリース契約なのに、家賃が減額されるというケースもよく見られます。これには借地借家法(第32条)がからんでいます

法律の条文では、契約の条件にかかわらず当事者は将来に向かって建物の家賃の額の増減請求ができるとされています。この条文を根拠に、サブリース会社は約束した家賃を減額請求してくるのです。

これは中央官庁や国会でも問題になりました

国土交通省が消費者庁と連携して注意喚起を行う

行政では比較的詳しい内容のリーフレットも配布し、そこで具体的な注意点も紹介しています。

国土交通省と消費者庁が注意喚起したポイントは以下の3つです。

  1. 契約期間中や契約更新の際に賃料が減額される可能性がある
  2. 契約期間中でも契約が解除される可能性がある
  3. 家賃を受け取るだけでなく出費がかかる場合もある

参考サブリース契約に関するトラブルにご注意ください!(消費者庁)

ついにサブリース規制法が成立

サブリース契約の問題点については、2018年から参議院でも議論されてきました。そして今年2020年の6月にようやくサブリース新法(賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律)が成立しました。12月15日から施行されます。

この法律により、大家さんとのマスターリース契約時に家賃や契約期間等を記載した書面を交付するなど、重要事項の説明に関する規制が設けられています。ちなみにマスターリース契約とは、大家さんとサブリース会社が結ぶ「ひとつめの契約」のことです。それに対して、サブリース会社と入居者が結ぶ賃貸契約を「サブリース契約」といいます。

また家賃の減額リスク等重大な事項を故意に告げなかったり、または嘘を言うような行為も禁止されるようになりました。

フドマガ
というより、こんな内容がいままで規定されていなかったことが問題ですね。

ただしすべてのサブリース契約がダメかというとそうでもなく、サブリース契約を上手に活用している大家さんがいることも事実です。ポイントを押さえればサブリースにはメリットがないわけではありません。

サブリース契約の類型

サブリース契約はどれも同じというわけではなく、大きく分けてふたつのパターンがあります。下の表のように、建築会社がサブリース事業を行っているケースと、賃貸管理会社がサブリースを行っているというケースがあります。

誰が建築会社賃貸管理会社
どんな目的でアパートを建てさせる賃貸管理費をもらう

大東建託やレオパレス21の場合は、アパートを建ててもらうことが第一目標なので、建築会社型に分類されます。かぼちゃの馬車事件を起こしたスマートデイズなどもこれです。

このパターンの問題点は、アパートの建築費が割高であるということです。大家さんは家賃が30年間保証されると思っているので、アパートの原価にそれほど注意を払いません。それに対してレオパレス21などの建築会社は建築コストを最小化したいので、建築資材の仕様を落とすなど、コストカットの努力をしています。

結果として大家さんは高い買い物をしていることになりますが、これはかなり大きな問題です。高く買っていれば、売却時に必ず赤字になるからです。

一方賃貸管理会社がサブリースに取り組んでいる場合は、アパート建築費で稼ごうというわけではなくて、管理戸数を増やすことでスケールメリットを出し、一定の収益性を上げようとしています。

このケースではあからさまに大家さんと利益が相反するわけではありません。そのかわり管理会社としては儲かるエリアにしか投資しませんし、家賃に関してもそれほど高いお金を出せるわけではありません。

このふたつのパターンのうち、強いていえばリスクが少ないのは、賃貸管理会社が行っているサブリースといえます。

またもうひとつ、やや特殊なケースとして分譲マンションを賃貸で貸し出すタイプのサブリースがあります。分譲マンションを区分マンションといいますが、投資用の不動産を扱う会社がサブリース契約をしつつ、区分マンションを一般投資家に販売するというパターンです。

このパターンの目的は、サブリース契約により空室リスクをヘッジすることで、金融機関の融資を獲得しやすくする、ということにあります。

ポイント

サブリースにはこのように分類されますが、最も注意をしたいのは建築メーカーのサブリースといえます。アパートを建てさせるときに相当な利益を乗せている上に、実際にサブリースがスタートした後、当初の条件を変更してくるからです。

つまり、建築会社のサブリース契約を利用する場合、大家さんは高い買い物をしており、家賃を減額されて破綻した場合に、物件を売却してもローンの残債務が残ってしまうということになります。リスクをヘッジするのであれば、アパート建築は普通の建築会社に発注し、サブリース契約を結ぶ会社は別途探すのがよいといえます。その際、先にサブリース契約を引き受けてくれる賃貸管理会社を探しておくべきだといえます。

この問題をより深く知りたい方には、ジャーナリストの三宅勝久氏が書いた『「大東建託」商法の研究』をおすすめします。

レオパレスではなく大東建託の例ですが、サブリースというスキームが何を狙った物なのかを知ることができます。

レオパレスのケースを具体的に見てみると……

6月5日付けの朝日新聞によると、レオパレスが1千人規模の希望退職を募り、人員を削減するそうです。2018年に界壁の未設置という施工不良が指摘され、そのほかにも不備の指摘があったレオパレスは、相当な規模で施工不良の物件を抱えているようです。

実はレオパレスの施工不備は界壁の未設置だけではなく、いくつも指摘されています。レオパレスの公式サイトで施工不備について出されたリリースは少なくとも4件。界壁の施工不備(2018年4月)、天井部施工不良(2019年2月)、界壁内部充填剤の相違および外壁構成における大臣認定との不適合(2019年2月)、界壁の耐火構造使用の不適合(2019年5月)について、公式に認めています。

レオパレスの赤字は803億円に拡大しているようですが、これについて朝日新聞の報道の要点は次の通りです。

  1. 施工不備物件の改修が進まず2割程度の部屋が空きの状況
  2. 新型コロナの影響で繁忙期に思うような営業ができなかった
  3. 新型コロナの影響等で改修工事が進まなかった

ではなぜ、レオパレスは多数の物件で問題のある建築工事を行ったのでしょうか? その理由を考える前に、レオパレスがどのように不正な工事を行っていたのかを見てみましょう。楽待の以下の記事が参考になります。

楽待「レオパレス施工不備問題、報告書で描かれた『ワンマン創業者』」

調査委員会は会社ぐるみと判断

上記の楽待の記事は、2019年5月に発表された弁護士からなる外部調査委員会の報告書をもとに、創業社長がワンマンであり遵法意識も薄かった上、業績拡大を優先したことが原因だったと述べています。

実際のところレオパレスが施工した建物の大半に不備があることから、不備を前提とした事業計画であったと判断されてもしかたがない状況です。

ただし、サブリース事業を行う会社の中で、レオパレスはまだマシな方だったと思います。なぜなら、スマートデイズなどはさらにひどかったからです。

サブリース事業の問題点

人はなぜサブリース物件に投資するのか? サブリース物件に投資するのは、不動産投資のプロではありません。素人がターゲットなのですが、なぜ素人投資家がサブリース物件に手を出すのかは明白です。

「家賃を保証します」と言われるからです。

アパートを建築する際、場合によっては億単位の融資を受けることになり、普通の人は不安で踏み切れません。そこで、アパート建築から利益を生みたい会社は「20年一括で借上げるので安心できます」「30年一括で借上げるので安心できます」といった営業トークで素人投資家を安心させます。

ちょっと古い記事ですが、2018年8月15日にMy News Japanに掲載された「大和ハウスよお前もか 20年一括借り上げで『大丈夫』だったはずのアパート経営、築7年で一方的に契約解除の無責任」と題する記事を見てみましょう。次のように書かれています。

 管理戸数54万戸という、大東建託に次ぐ規模のアパート建設管理業部門を持つ大和ハウス工業(樋口武男会長、芳井敬一同社長・本社大阪市)が、「大丈夫」と安心させて販売したアパートの20年一括借り上げ契約を、経営が苦しくなったとみるや、わずか7年目にして、オーナーとろくに話し合いをすることもなく一方的に解除していた事実が判明した。男性は、契約解除の無効を訴えて裁判を起こし、一審・釧路地裁は、オーナーの一部勝訴を言い渡した。大和ハウス側は控訴し、なおも争っている。「建てるときは“大丈夫です”と繰り返した営業マンは、苦境に陥ったとたんに手の平を返したように冷淡になりました。建築費用も割高だった、と後から知りました」と男性は憤る。借金をさせて建てさせ、利益を出したら、あとは野となれ山となれ、借金返済に窮したオーナーなど見捨ててしまえばよい――そういわんばかりの冷酷な企業体質が浮き彫りになった。

My News Japan

つまり、一括借り上げは暫定的な約束でしかなく、契約書を読み込めば建築業者(管理業者)が後から都合よく条件を変更できるようになっているのです。ただ、小さな文字で書かれた契約書を隅々まで読み込む時間や気力のある人は少数派。多くの人は口頭の説明だけで契約書に記名押印してしまいます。

サブリース契約では前提と思われた「20年一括借上げ」「30年一括借上げ」が、実はお題目だという点が問題なのです。しかも、アパートオーナーが自分で賃貸経営をした場合よりも家賃は安く設定されているため、メリットがほとんど存在しません。

サブリース契約(長期一括借上げ)とは、オーナーを安心させてアパートを建てさせるためのツールだった、と考えた方がよいでしょう。業者としては、オーナーが安心して何も考えずにいてくれるおかげで、手抜き工事もやりやすくなるわけです。

レオパレスが建築基準法に合致しない建築物を大量に建築した背景には、そういった事情があると考えられます。


2020年9月29日追記

朝日新聞朝刊に『レオパレス 債務超過118億円 施工不備後 入居率回復せず』という記事が掲載されました。

記事によるとレパレス21が「2020年6月末時点で118億円の債務超過になっていたとみられる」と発表したそうです。理由としては施工不備が発覚していこう、アパートの改修作業が進んでおらず、入居率が回復しないことを挙げています。報道では、新型コロナウィルスの影響によって工事が遅れたことなどがその理由とされています。

ただ、実は建設業は本来、新型コロナウィルスの影響をあまり受けていないといわれています。私の周りの建設関係会社でも「コロナウィルス流行下でも仕事が忙しい」「大手はしばらく自粛したが、その自粛期間は2週間程度で、建築工事は通常と変わらず進めていた」といった話が多く聞かれます。

そこから「新型コロナウィルスの影響によって工事が遅れた」というのは本当の理由ではない可能性もあると考えています。

また朝日新聞の記事によると、レオパレス21の現状は次の通りです。

アパートの施工不備問題後に低迷した賃貸事業の回復が十分に進まないなかで会社の資産よりも借金などの負債が多い超過に陥り、財務状況が一層深刻になった。

朝日新聞

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