不動産トピック

Chikirin氏の新型コロナの不動産業への影響は間違ってない?

2020年4月7日

有名ブロガーのChikirin(ちきりん)氏の記事に違和感を覚えたので、ちょっと検証してみました。

Chikirinの日記「壊滅度別の業界リスト(新型コロナ編)」

端的にいって、影響力のあるブロガーが知らないことを適当に書き飛ばして不正確な情報を拡散するのはよくないと感じます。もうちょっと調査したらよいと思うのですが……。

不動産業界は壊滅度4?

Chikirin氏によれば、不動産業界は壊滅度4(5段階で数字が大きいほど壊滅しやすい)だそうです。そもそも、「ゼネコン、デベロッパー、不動産業界」とまとめて評価されていることに違和感が……。

Chikirinの日記より

まず、さっくりと前段のゼネコン&デベロッパーについて考察しましょう。ここは私の専門外なのですが、データという便利なものがあります。Chikirin氏はゼネコンやデベロッパーを壊滅度4に指定した理由について、「オリンピック延期で、特需も止まりそう」と述べています。本当でしょうか?

  1. オリンピック特需はもう終わってるのでは?
  2. 執行できなかった予算は次年度に繰り越すのでは?
  3. 公共事業と一般不動産の需要は異なるのでは?

とりあえず、疑問は尽きません。オリンピックで予定されていた主な建物はすでに建設済みですし、その予算は間違いなく執行されるわけで、その点ゼネコンにダメージはないでしょう。万が一執行されなかった予算は次年度に繰り越されます。その他、オリンピックのために着工できなかった公共工事もあるわけで、それらの予算も考えると、ゼネコンは大丈夫じゃないかと思われます。参考までに、三菱UFJリサーチ&コンサルティングによると「国の一般会計の公共事業関係費の予算の動向に関して、翌年度繰越額の推移をみると2017 年度は 2.6 兆円程度であり、 2017 年度の予算現額に対する比率は 27%程度となっている」ということであり、さらに地方公共団体の繰越額が4.5兆円ほどあるそうです。役所は今年使えなかった予算は来年使う、と考えるのが妥当でしょう。

ただし、Chikirin氏がゼネコンと同一視している(気がする)デベロッパー(とくに投資用マンションなどを販売している会社)は苦しくなるでしょう。

ここで、帝国データバンクが2009年4月に発表した「全国企業倒産集計 2008年度報」を見てみましょう。

2008年度のマンション分譲業者の倒産は75件(前年度17件)で、前年度比341.2%(58件)の大幅増加。2007年8月のサブプライム問題発生後、業界環境が急速に悪化し、それまで皆無に近かったマンション分譲業者の倒産が続発した。とくに2008年6月以降は、深刻な金融危機の影響と販売不振の長期化を受け、倒産件数が急増している。

上記は金融危機(リーマンショック)後の状況ですが、同じことが起こる可能性はあります。首都圏を中心にマンションの建築・分譲が盛んに行われていた状況を考えると、在庫処分に困るデベロッパーが出ることは想像に難くありません(注1)。

「全国企業倒産集計 2008年度報」帝国データバンク

そこから、公共事業を行う建設会社は大丈夫そうだけど、マンション(特に投資用は厳しそう)を販売する会社は苦しい展開になると考えられます。このあたりの業種は十把一絡げにするわけにはいかず、同じ壊滅度にランクすることがそもそも間違いでしょう。

補足ですが、マンションデベロッパーの上位ブランドには野村不動産や東急不動産といった総合不動産業者がランクインしています。しかし野村不動産の連結売上高に占める仲介・CRE部門のシェアは5.6%に過ぎず、こういった企業は不動産仲介業ではなくデベロッパーに分類しておいた方がしっくりきます。

野村不動産HPより

不動産業とは何か?

では、不動産業とは何かというと、実はここまで考察してきた不動産デベロッパーを含む、不動産にまつわる比較的幅広い業種を指します。公益社団法人全日不動産の「不動産業の業務形態について」という記事を読むとわかりやすいでしょう。

公益社団法人全日不動産協会「不動産業の業務形態について」

上記の記事では賃貸仲介業、売買仲介業、賃貸管理業、不動産コンサルティング業、不動産デベロッパーなどを不動産業に含めています。

その中でも、市民の感覚でザ・不動産屋といえば仲介業者といえるでしょう。日頃お付き合いする不動産屋といえば、だいたい仲介業者です。で、そのザ・不動産屋は新型コロナウィルスの影響で壊滅しそうかというと、そうでもない感じです。仲介業は他人の物件を売買して生計を立てているため、在庫がありません。そのため、キャッシュフロー的には楽な業種です。現在「苦しい」といっている業種は、これほど短期間に苦しくなるわけですから、キャッシュフローが止まりそうというケースが多いと思われます。その点、ザ・不動産屋はまだ大丈夫です。

ザ・不動産屋は他業種のキャッシュが枯渇した段階でも、まだ存続できている可能性が高いと考えられます。ホテル・旅館業などは今後かなり苦戦が続くはずですが、そういった業種の保有物件が売りに出されることは容易に予想されるわけで、それを仲介するのはザ・不動産屋である仲介業者です(不動産コンサル→仲介業者という連携などもけっこうありそうですが)。

実際のところ、すでに水面下で売却を開始しているホテルの売物件資料がメールで流れ始めています。もちろん普段からそういった情報は流れていますが、昨今増えていると感じます。新型コロナウィルスによる経済停滞は仲介物件数を増やすという方向にも作用するわけで、不動産屋にとって現在がどれほど苦境なのかは判断が難しいところです。

というわけで、Chikirin氏が適当に書き飛ばした記事はかなり怪しいと考えています。


4月17日追記

朝日新聞朝刊に「マンション発売近畿3月5.5%増」との記事が掲載されました。同記事によると、3月の首都圏でのマンション発売戸数は前年同月比で35.8%減の2142戸。7カ月連続で減少しているようなので、コロナ渦との関連性を疎明できるようなできないような……という感じですが、むしろ影響が出るとしたらこれからではないかと思われます。

その傍証となるのが近畿圏の発売戸数。こちらは前年同月比で5.5%増。ただし成約率等は下がっており、これからコロナ渦の影響が出る可能性はあると思われます。引き続き注目しつつ、データが出たところで判断することになるかと思います。


注1……ただし2019年に首都圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)で売り出された新築マンションの戸数は3年ぶりに減少。前年比15.9%の3万1238戸でした。

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