不動産相続

空き家を賃貸にした場合のコストは? デメリットとメリットも解説

2020年3月21日

不動産業(宅建業)を営んでいると、よく相談を受けるのが「相続したけど使っていない家を売るべきでしょうか? 賃貸すべきでしょうか?」という問題。これは相談相手をよくよく見極める必要があります。

賃貸管理業主体の不動産屋に相談したら「賃貸がいいんじゃないですかね」といいますし、売買主体の不動産屋に相談したら「売ったほうがいいんじゃないですかね」というでしょう。それらはポジショントークにすぎません。結局はご自分で判断する必要があります。

そこで、このエントリーでは、空き家を賃貸にした場合のコストや諸条件について解説します。貸すべきか売るべきかは、その他のエントリーも読んでみたうえで、総合的に判断してみてください。

実は安い管理手数料

賃貸不動産の管理手数料は意外と安く、月額家賃の5~10%くらいが一般的です(5%に設定している会社が多いと思います)。

家賃月額10万円で貸した場合の管理料は5,000円ですから、大家さんの取り分は95,000円。集合住宅であればこれでも不動産屋(賃貸管理業者)にとっては効率がよく、特に不満はないと思います。ただ、一戸建てとなると効率が悪いので、戸建てのみ少し高めの管理料を設定している業者も見かけます。

実は賃貸管理にかかるコストは安い

そこで、管理の手間を考えると、一般論としては「何もしないよりも、賃貸管理業者にまかせて入居者募集をしたほうが有利ではないか」と考えられます。

実例に見る一戸建ての賃貸管理

たとえば沖縄でぼくが受任した事例をもとに、一戸建ての賃貸管理を任せるとどのような作業が発生するのかを見てみましょう。 県内でもわりと田舎エリアの一戸建て住宅です。住んでいたおばあちゃんも亡くなり、管理の手間が増えたことから賃貸することになりました。

一戸建ての管理は意外と多岐にわたる作業が発生

基本的に大家さんがすることは、賃貸管理契約書に署名・押印するだけです。あとは管理業者が入居者を募集し、契約書を作成し、その他以下のような管理作業を行います。古い建物なので、発生した業務内容は多めです。

事案対処した内容
階段付近の漏水・黒カビ大工さんを手配して内壁の張替え。漏水チェック
畳の劣化・カビ畳屋さん手配。畳交換
雨水による床の劣化床研磨・ニスによる塗装
障子紙多数破損障子紙貼り換え
玄関鍵がかからない玄関鍵一式交換
道路まで木の枝が繁茂伐採・廃棄
雑草が繁茂草刈り・廃棄
ベランダからの排水不良塩ビパイプ交換
残置物が多数残っていた残置物撤去
2階トイレから漏水換気扇パイプからの漏水を確認し修補
役所水道課から微妙な漏水の指摘洗面水栓のパッキンが原因と特定し修補

だいたいここまでで、大家さんの負担は約40万円でした。けっこうあちこち修理したり掃除しましたが、だいたい家賃の4か月分で収まったことになります。一方この物件の年収は120万円(賃貸管理手数料を除くと114万円)です。

その他に管理業者が行うのは、家賃収納や火災保険・家賃保証会社の手配など。この点では大家さんの負担はありません。

そこから考えると、相続などで使わない一戸建てを遊ばしておくなら、賃貸して収益化したほうがよいと思います。

賃貸借契約の内容には要注意

ただし、いつかは退去してもらって自分が使うとか、兄弟で遺産分割を行う必要が出そう……といった場合、賃貸借契約書の内容には注意してください。普通借家契約にすると、退去してもらいたいと思ってもほとんど不可能です。借地借家法では入居者(賃借人)の権利が手厚く守られているため、賃貸人(大家さん)の側から「出て行ってください」ということはほとんど不可能です。

そこで、定期借家契約をおすすめします。これは「一定期間が過ぎたら満了する」というタイプの借家契約です。2年程度の定期借家契約としておき、契約書には「2年経過後双方合意すれば再契約する」という内容を盛り込んでおくとよいでしょう。

こうしておけば、最長でも2年後には入居者に退去してもらい、自分で利用したり売却したりすることが可能になります(入居者ありのまま売却も可能ではあります)。

定期借家の期間は1年やそれ以下に設定することも可能ですが、あまり短いと入居者にとって酷な契約になってしまいます。ある程度ゆとりをもって住んでもらえるように2年とすることが妥当ではないかと思います。

その他定期借家についての詳細は、以下のエントリーと、そこでご紹介している書籍を参照してみてください。

『最強の定期借家入門』

このエントリーは音声でも聴取できます。 「定期借家契約」という、賃貸物件の契約の仕方(貸し方)を解説した本。基本事項から解説する、入門書的な内容です。 本書では、期限を区切って物件を貸す「定期借家契約 ...

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一戸建てを貸す場合の問題点

その他に一戸建て住宅を貸す場合に気になるのは、借り手がつくエリアかどうか。「ペット可にする」とか「事業用OKとする」など条件を緩和することで、ある程度解決できる場合もありますが、本当に人口減少が続いているなどの理由で厳しい場所もあると思います。民泊用に貸し出してみるなど最後の手段をとっても入居者がつかない場合は、思い切って売却に切り替えたほうがよいかもしれません。

民泊物件.com

民泊業者に貸し出すとしたら、上記のようなサイトやジモティなどを利用することになります。

また、ペット可として募集する場合は、室内が傷む可能性が高いため、そのためのデポジット(ペット保証金など)をあらかじめ徴収しておくほうが安心です。

賃貸したほうが建物が傷む?

一般論としてはむしろ逆です。賃貸して人が住んだほうが、建物の傷みは進行しません。空き家のまま締め切っていると、以下のような問題が生じがちです。

  1. 湿気等によるカビの繁殖・木部の腐食
  2. フローリングのひび割れ、そり
  3. シロアリ等害虫・害獣の発生
  4. コーキング等の劣化による雨漏り・浸水
  5. 雑草等の繁茂による近隣への迷惑

上記は人が住んでいればおおむね防ぐことができます。また、賃貸人(入居者)には、建物の不具合に気づいたら管理者に報告する義務があります。賃貸借契約の際に、この点をしっかり説明しておけば、さらに安心できるでしょう。

自分の一存で決められない場合は?

たとえば兄弟一同で相続をした田舎の一戸建て住宅で、「貸すべきか」「売るべきか」で議論が続いているような場合。共有者(共同相続人)ひとりの権限では賃貸管理契約を結んで賃貸に出すことができないケースがあります(共同相続人の持ち分の価格の過半が必要になります)。

そのような場合でも、住宅の資産価値を落とさないようにするには「空き家管理契約」という方法が有効です。空き家管理事業者に定期的に住宅を巡回してもらい、できるだけ良好な状態にメンテナンスしてもらうという方法です。

空き家の管理だけであれば民法上の「保存行為」にあたるため、共有者のひとりが行うことができます。


Illustration: Business Avatar Vectors by Vecteezy

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