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不動産査定と不動産鑑定の違いは? 似ているようで違うその業務

2020年1月14日

NHK「鑑定!どうぶつ不動産」より

NHK総合テレビで『鑑定!どうぶつ不動産』という番組が放送されていました。動物写真家が撮影したVTRなどをもとに、不動産鑑定士の女性が動物の巣の不動産価値を「査定」するという内容。不動産屋の立場で見ると、おもしろい番組ではあるのですが、あるコトが気になって気になって、全然集中できませんでした。

あるコト、というのは不動産の「鑑定」と「査定」の使い分け。

不動産鑑定士さんが「査定」するというのはちょっと考えられません。鑑定士さんは「鑑定」するのです。でもテレビ的(という言葉で、テレビ屋さんはなんでも済まそうとしますね)には査定の方が視聴者に通じやすいと思ったのでしょう。不動産鑑定士さんに「先生、すみませんが番組中では査定でいってください」「……ま、まぁ、しょうがないですね」みたいな話し合いの後に、動物の巣を不動産的に「査定」する番組になったのだと思います。

ちょっと補足すると、番組タイトルは『鑑定!どうぶつ不動産』と、「鑑定」という言葉を使っています。このあたり、番組スタッフが不動産鑑定士さんの立場を最大限考慮した結果かなと思ったりもします。なんだかちょっと、玉虫色的で苦しい構成ですね。

【参考リンク】NHK「鑑定!どうぶつ不動産」

不動産査定とは何か?

普通に考えて、不動産の「査定」というのは市場(しかも今、この瞬間の市場)で売れそうな価格を出すことを指します。そして、宅建業者(不動産屋)がその査定額を出すのです。実は「査定」については、不動産の鑑定評価のような厳密な手順は存在せず、非常に難解といわれる鑑定理論などとは無縁です。悪くいえば、けっこうアバウト。よく言えば、実践的。

なぜアバウトにならざるを得ないのかというと、正直なところ不動産の価格は売ってみないとわからないからです。売り出してみて、市場の反応をみて、初めて自分の査定が正しかったという感触が得られたり(得られなかったり)するわけです。なので、不動産の価格査定というのはゴールではなく、営業活動のスタートなんだなと感じます。

もちろん、レインズなどに登録された過去の取引事例を利用して査定したり、場合によっては収益(家賃など)から逆算してみたりと、できるだけしっかりした査定額を出そうとします。でも、市場は生き物ですから、その価格で売り出してみて初めて手応えが得られるわけです。そのように、市場と深くコミットした数字が不動産「査定」額です。

鑑定評価とは何か?

若干モヤモヤとした思い出をご紹介しましょう。数年前のお話です。

沖縄かりゆし不動産で購入した糸満市真栄里の土地に、糸満市所有の擁壁が5平方メートルほど越境していることが判明しました。分筆登記時に判明したので、測量には市役所の担当者も立ち会い判を押してもらっています。こちらとしては越境したままでいいので、むしろ糸満市の擁壁の上にもう一段擁壁をしたいと考えていました。

ところが、擁壁を管理する糸満市の水道課は「絶対に買い取ります」と言って譲りません。たぶんもう「買い取りする」という稟議を通してしまっていたのかなと思います。税金がもったいないし、ウチも売りたくないし、誰もトクしないからやめてほしかったのですが、すでに稟議を通していた職員としては、この案件を取り下げるのがめんどくさかったに違いありません。

とにかく、絶対買う姿勢で臨んできました。しかたない、売りましょうという事になったのですが、このときに糸満市が買い取る価格は鑑定評価で得られた価格です。

ウチは市場価格で買い取ったので、坪単価18万円で購入していました。それを糸満市は坪単価13万円で買い取ったわけです。損した感しかないわけですが、多くの場合役所は鑑定評価を行った価格で売買しています。なぜならそれが、ある種オフィシャルな価格であると考えられているからです。

不動産の鑑定評価とは何かというと、「その対象である不動産の経済価値を判定し、これを貨幣額を持って表示することである(『不動産鑑定評価基準』)」とされています。そうすると、鑑定評価に基づく価格は「ゴール」であると考えられます。鑑定評価が出たら、その先で市場にコミットしないからです。評価額を、僕たちがあとから変更することはありません。

もちろん、「一般の商品の価格が自由なプライス・メカニズムの下で形成されるのに対し、不動産は個別性が強く、取引市場も局限されているので、自由なプライス・メカニズムが成立し難い。不動産、特に土地の適正な価格を求めようとすれば、合理的な市場の価格形成機能に代わって不動産の適正な価格を判定する作業が必要となる。このような意味で、不動産の鑑定評価とは合理的な市場があったならばそこで形成されるであろう正常な市場価値を表示する価格を不動産鑑定士が的確に把握することを中心とする作業である(日本不動産研究機構『不動産用語辞典第7版』」ともいわれます。

これをまとめるなら「市場に直接コミットしないけど、仮想的な市場を想定して出した、オフィシャルな数字」といえばよい気がします。

その他、不動産鑑定士さんたちは様々なお仕事をしています。たとえば毎年公表される地価公示や地価調査や路線価。「日本で一番価格が高い土地は東京都中央区銀座五丁目の鳩居堂前!」なんていう話題になる、あれです。このような数字は不動産鑑定士さんがビシッとぶれのない数字を出しているそうです。やっぱり「オフィシャルな数字を出すのが不動産鑑定士さんであり、鑑定評価である」といえば、いちばんしっくりくると思います。

「査定」額と「鑑定」額は一致するの?

不動産の価格査定によって得られた価格と、鑑定評価によって得られた価格は、一致する場合もありますが、一致しないことの方が多いと思います。市場にどこまでアジャストしていくかという部分で、考え方が違うからです。

たとえば沖縄県の土地価格は、2019年の地価公示で全用途平均で1割近い上昇だったとされています。でも僕たちの実感では、2019年の夏の時点では、すでに横ばいか下降局面だったのではないかと評価しています。売出し価格に対して強い指し値が入って成約するケースが増えたり、高額な物件が売れずに格安物件ばかりが成約したりと、2018年の勢いが感じられなくなっていたからです。

となると、僕たちはこの状況を価格「査定」に反映させないわけにはいきません。もちろん反映させる方法はなかなか難しく、簡単にはいきませんが、少なくとも査定書に「現在の市場は横ばいかやや下降に向かっている」という補足をつけるなどして、お客さんにその市場感を伝えます。

今の価格を敏感に反映しているのは「査定」のほうでしょう。僕たちは市場価格の坪単価18万円で土地を買い、糸満市はその土地を鑑定価格の坪単価13万円で買い取ったわけですが、普通に考えれば「これは坪18万円で買えよ」といいたくなる場面です。

もちろん、鑑定評価をdisろうというのではありません。「今いくらで売れるのか?」という可能性を探るのなら価格「査定」、訴訟などではっきりと数字を出したいのなら「鑑定評価」と、使い分けるのがよいと思います。

あと、不動産屋の「査定」はそのレベルがばらばらであるという弱点があります。しっかりした業者に査定させないと、全然ダメな数字が出てくるコトがある(しかも意外とよくある)点にはご注意ください。不安な場合は、以下の記事で自己評価してみるのもひとつの手です。

自分でできる不動産査定。自宅や土地の大まかな値段を出す方法

2020年3月23日追記。下記エントリーでファイルメーカー(FileMaker Pro)を利用した査定方法を解説しました。ファイルメーカーをお持ちであれば、そちらを利用したほうが簡単に概算査定が出せる ...

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