不動産トピック

『平成はなぜ失敗したのか』

2019年10月7日

『「超」整理法』などの著作で一世を風靡した経済学者・野口悠紀夫氏が、失われた30年を同時代人として分析した一冊。平成不況がどのような構造だったのかを、経済学に縁のない我々にもわかりやすく概観しながら、なぜ日本が世界に後れを取り始めたのかを分析しています。
基本的には「垂直統合型の製造業が水平統合型へと移行するなかで、日本はそれに気付かず、最後まで垂直統合型を志向したがために、世界での競争力を失った」との論点にたち、30年にわたる日本衰退の道をたどり直していきます。

垂直統合型とは、自社完結型の製造業で、旧来の日本のモノ造りに見られる形態。それに対してアップルは自社での製造をやめ、水平分業型とよばれる生産方式に移行しました。

象徴的なのはホンダカブの生産工場です。ホンダは一度カブの生産を海外工場に移転し、その後九州の自社工場に戻し、また海外に移転する……という迷走の道をたどっています。シャープが液晶の国内自社工場生産にこだわり、結局は台湾企業の傘下に入ってしまったことも思い出されます。

野口氏は本書の中で「製造業で新興国と競争はできない」と説きます。さらに、

このような環境変化の中で先進国が目指すべき道は、アップルのように、開発・研究や販売という付加価値が高い分野に特化し、新興国の製造業と棲み分けの上で協業してゆくことです。さらに、技術革新が相次ぐ先端サービスやIT(情報技術)など、先進国の企業が優位性を発揮できる分野に特化してゆくことです。しかし、どちらも、日本型大企業が不得意な分野でした。日本企業はそれらに対応することができなかったのです。

と分析しました。

そのうえで日本経済再生の方法についての提言も行っていますが、それはかなり難しい道のように思えます。

本書の魅力は、経済の専門用語をあまり使わず、しかし詳細な実例をたどりながら日本経済の現状を分析している点にあります。現状は非常に厳しく、このままでは日本経済の再浮上はあり得ないという野口氏の意見は、ぜひ知っておきたい鋭い提言です。

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