不動産売却

【防止策あり】不動産の囲い込み行為

2019年10月7日

不動産売却を考える人が仲介契約をして、手持ちの資産を売却してもらう場合、不動産業者による囲い込み行為がある……という話聞いたことはあると思います。現在でもよくある話ですが、効果的な対処方法があります。

ここでは、囲い込み行為とは何かを解説し、不動産屋に囲い込ませない回避策をご紹介します。

片手取引と両手取引

ポイント

まずは仕組みを知らないと、不動産屋に囲い込み行為をさせない回避策もうまくいきません。面倒ですが、ここは仕組みから理解しておいてください。

不動産売買において、仲介業者が売主と買主の間に立って契約をまとめる場合、その契約の類型はふたつに分かれます(不動産業者からみた類型ということです)。ひとつは、片手取引。そしてもうひとつは両手取引です。

 取引の形仲介手数料
片手取引売主・買主を別々の業者が仲介物件価格の約3%
両手取引売主・買主を同一の業者が仲介物件価格の約6%

まず片手取引とは何かを解説しましょう。売主の不動産(価格1000万円)を、仲介業者A社が売却依頼を受けて広告しているとします。仲介業者B社が、その物件を買いたいお客さん(買主)を見つけて成約した場合、片手取引ということになります。

図のように不動産業者A社は売主から仲介手数料をもらいます。一方の不動産業者B社は、買主から仲介手数料をもらうわけです。その時の仲介料は次の通りです(宅建業法の上限)。

不動産業者A360,000円+税
不動産業者B360,000円+税

これに対して両手取引の場合は、登場する不動産業者が1社となります。すなわち、売主の不動産(価格1000万円)について仲介業者A社が仲介依頼をうけ、A社自身が買主を見つけるパターンです。この場合仲介業者A社は売主と買主の両方から仲介手数料を受領できるので、受け取る仲介手数料の額は片手取引(共同仲介)の2倍になります。

不動産業者A720,000円+税

売上げが2倍になるということですから、不動産屋(宅地建物取引業)の立場で考えた場合、両手取引の方が有利であることは間違いありません。

ポイント

売主、買主の仲介手数料を独占できる「両手取引」は、不動産屋にとって魅力。

囲い込み行為とは何か?

もし上記の不動産業者A社が、顧客の利益より自社の売上げを優先する会社であった場合、次のような戦略をとります。

不動産業者A社はなんとしても両手取引に持ち込みたいので、不動産業者B社から、売主所有の不動産に客付けをしたい(購入する客を紹介したい)と言われても、紹介せず自社で売却しようとします。いいわけは何とでもなります。

御社の物件を購入したいお客様がいるのですが、まだ残っていますか?
不動産業者B
不動産業者A
その物件は申し込みが入りました(ウソですけどね)

そのようにして不動産業者A社は、他社からの客付け申し込みを断ります。このような囲い込み行為に、どのような問題点があるでしょうか?

そもそも不動産の流通を阻害しているわけで、原理的に売主の利益を毀損する行為です(売却チャンスを逃しているからです)。しかし、最大の問題はここではありません。むしろ価格査定の時点から、売主をだまそうとするケースがあり、そちらのほうが深刻です。

やたらと高い査定額には注意を

不動産業者が相場とかけ離れた高い査定額を出すケースがあります。よく「自宅がこんなに高値で売れた!」的なネット広告を目にしますが、そういった広告の裏には売主をダマそうとする意図が(少なくとも若干は)存在します。

売れるはずのない高値であっても、売主は素人であり相場に詳しくはありませんから「ウチの自宅の価値を分かってくれている!」「ウチはこんなに高かったんだ!」と、喜ぶのが通常です。根拠なく高い査定額を出した不動産業者への評価が高まり、この業者に仲介を依頼します。

しかし、相場とかけ離れた高値ですから、なかなか売れません。でも実は、不動産屋は売れなくても困らないのです。いわば物件を塩漬けにしておき放置する、ということです。その間レインズには掲載するので、不動産業者C社やD社の客付け申し込みがあるかも知れませんが、それもすべて「申し込みが入っています」と断り続けます。

不動産屋は売れなくても困らない

売主は、「なかなか売れないじゃないか」とクレームを入れるでしょう。

高く売れるって言ったのに、売れないじゃないか。
お客さん

しかし、不動産業者A社は「どうも時期が悪いようです」「近隣で同規模の安い物件が出てしまったせいで長期化しています」などと、適当な理由を述べて売主を信じ込ませるでしょう。

不動産業者A
近くですごく安い建売分譲が出たんですよ。ライバルが手ごわすぎるんです。これが売り切れたら、流れが変わると思うんで、もうちょっと待ってください。

やがて売主の物件は本当に売れ残ってしまいます。不動産広告に長い間載せ続けている物件は、消費者からもよい目で見られませんし、さらに売れにくくなっていきます。

こうなった時点で、不動産業者A社は、売主に値下げを持ちかけます。「思い切って値下げしないと売れないですね」。そういわれて売主が値下げする価格は、本来の相場か、むしろそれより安くなっているでしょう。

強引に両手取引に持ち込むのが囲い込み行為

こうして安くなり、売りやすくなった物件に、不動産業者A社は自社の買主をつけます。見事、両手取引が完成。これが、 囲い込み行為の流れです。

不動産業者A
売却に半年かかったけど、仲介手数料が倍額手に入ったから、儲かったぞ! 最終的には値下げしたから、お客さんはソンしたけどね。

囲い込み行為は法律上も禁止されていますし、倫理上も許されるものではありません。売主の利益を犠牲にして、不動産業者の利益を倍増させようという行為だからです。しかし、残念ながらよくある行為でもあります。

不動産売却時には査定額にだまされないように、不動産営業マンの査定内容そのものを、しっかりと吟味することも大切です。

実は簡単な回避方法があります

とはいえ、囲い込み行為を回避する(防止する)方法は簡単です。一般媒介契約にすれば、原理的に囲い込むことができません。一般媒介にして2社以上の不動産会社に仲介依頼をすれば、抱え込むことができなくなります。

ただし、一般媒介にはメリット・デメリットがあります。詳しくは、以下の記事をご参照ください。

プロが自分の不動産を売るなら「一般媒介」を選ぶ。その理由は?

不動産を売却する場合、不動産会社に仲介を依頼するのが一般的です。 この「仲介」を、宅建業法では「媒介」と呼んでいます。媒介には3つの類型があり、それぞれメリットとデメリットがありますが、売主(お客さん ...

続きを見る

一般媒介で1社のみと仲介契約をするのはおすすめできません。最近は、レインズ登録の義務がない一般媒介をあえて提案し、レインズに登録せずに抱え込むという手法も増えているからです。一般媒介で2社ないし3社と契約するというのが、囲い込み行為を回避するコツです。

より完璧な回避方法は以下の記事で!

下記の記事では、抱え込み行為を類型別に分類し、それぞれに対して有効な対策を解説しています。上記のメモで少しだけ触れた「一般媒介での囲い込み」についても解説があります。

【不動産の囲い込み行為】ケースごとの回避方法

HIDE不動産の囲い込みにはいくつかのパターンがあります。単純な囲い込み行為から、巧妙な物までいろいろです。 といわれると深刻な問題のように思えますが、囲い込み行為はその類型ごとに対処方法があるので、 ...

続きを見る


参考までに、2018年に出たばかりの時は「衝撃」といわれたダイヤモンド不動産研究所の記事へのリンクを貼っておきます。不動産を売却する前に、一読しておくこと役に立ちます。

参考ダイヤモンド不動産研究所……大手仲介会社が行う囲い込み行為の現状について解説した記事にリンクします。

買取り業者がからむ囲い込みには最大限の注意を!

最も悪質な囲い込み行為は、専任返しによるダブル両手を狙うパターン。業界用語がコテコテすぎてわかりにくいですが、簡単に言うと、塩漬けにして価格を下げた物件を格安で買い取り業者に買わせて(ここで1度目の両手仲介)、売り出すときには「格安で買わせてくれたお礼」に専任媒介をもらって再販(ここで2度目の両手仲介)という、仲介手数料を最大化する営業方法。かなり悪質ですが「儲かるならやる」という業者もいます。

HIDE
ここからは特殊ケースなので、さすがに目にする機会は少ないです。

不動産業はキックバック産業

不動産屋はたくさんのキックバックをもらっています。あなたが支払ったお金が、どのように不動産屋に環流しているか、ちょっと確認してみましょう。

HIDE
たとえば賃貸物件に入居したとき、家賃保証会社を入れることが常識となりつつあります。この家賃保証料、ざっくり1~2割くらいが不動産屋にキックバックされています。さらに、あなたが不動産屋の窓口で支払わされた火災保険の保険料。ここからも何割かがキックバックされています。

不動産の賃貸管理は大もうけはしにくい業種ですが、キックバックでかなり潤っているといえます。

では、売買の仲介を依頼した場合は? ここにもたくさんのキックバック案件が隠されています。たとえばリフォーム業者を紹介してもらった場合、すべてではありませんが、5%前後の紹介料が不動産屋にキックバックされているケースも散見されます。

HIDE
一般的な銀行融資ではキックバックはありませんが、特定の金融機関(フラット35が多い)の場合は、数万円程度の紹介料が不動産屋にキックバックされていることがあります。

このようなキックバック案件の中で高額になりがちなのが、同業者(不動産買取り業者)からのキックバック。ここは重要なので、ぜひおさえておいてください。

売主を干すのはなぜ?

売主を干すのはなぜ?

業界で「干す」という用語があるそうです。「そうです」といっているのは、かなり悪徳な方々がとる行動であり、通常の不動産業者はそこまでしないからです。業界にいても実際に見聞することはめったにありません。

さて、「干す」というのは、物件を塩漬けにして売主の資金的体力を奪うこと。物件を干すような悪質業者に、仲介物件を専任媒介でまかせた売主はかなり不幸です。こういう売主さんは、自分が仲介依頼をした業者がちゃんと仕事をしているかどうか、なかなか確かめるすべを持ちません。そこで、

うーん、時期が悪いのか問合せがないんですよ
不動産業者A
積極的に広告しているんですが、他社からも問合せがないですね
不動産業者A

といった説明を真に受けてしまいます。

そして、じわじわと物件を干された売主は、最終的に低価格での売却に同意してしまいます。

そこで登場する買取り業者

物件を干して売主を弱らせるだけ弱らせた仲介業者は、おもむろにこう言います。

実は買取り業者さんにお願いしてみたら、この物件をなんとか買取ってくれそうなんですよ。ちょっと強めの価格交渉はありますが、このチャンスに売却した方がいいですよ
不動産業者A

資金的にも追い詰められた売主はこのオファーに同意するしかありません。

このようにして買取り業者は激安で物件を入手します。仲介業者は買取り業者が買い取る時に仲介手数料を手にしますが、それだけではありません。

「専任返し」とは何か?

買取り業者は、買った物件を必ず売ります。この時に、激安で物件を流してくれた仲介会社に、お礼として専任媒介でその物件を販売させるのです。

これを専任返しと呼んでいます

その結果、仲介業者は非常に効率のよい営業ができます。

図のように、買取り業者が物件を購入するときには両手仲介になります。売主と買主双方から仲介手数料が入ってきます。

専任返しをもらえば、買取業者が売却するときに必ず仲介料をもらえる

また売却時には専任媒介をもらっていますから、最低でも片手は入ってきます。うまくいけばここでも両手をもらえるでしょう。

買取り業者購入時弱らせた売主と買取り業者から両手で手数料
買取り業者売却時専任なので最低でも買取り業者から片手の手数料

つまり、ひとつの物件で最高4件の仲介手数料を手にすることができる(ダブル両手)ので物件を囲い込み、そして売主を干すわけです。この「専任返し」こそが、最強のキックバックといえます。また、専任返し+営業マン個人への金銭キックバックという形態も存在します。


Illustration: Business Avatar Vectors by Vecteezy

-不動産売却
-,

© 2020 fudomaga | 不動産マガジン